相容れない二人が 智司夢
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観光地である、山頂の展望台に来ていた。
偶然、校外学習で居合わせた男子学生達が騒がしくする中、先程までは晴天だった空も、雷雲の発生と共にゴロゴロと喧しく唸り始める。
「離れた場所で煙草吸ってるだけなんだもん。一緒に景色見て綺麗だねってしたかったのに」
山を下る為にロープウェイの駅を目指していた道中、隣を歩く智司に対して愚痴を零す私。
「…ソリャ悪かったな。タダ、あの制服は地元の奴等でよ。オラァ、面が割れてんだわ。だからよ、面倒な事にゃなりたくなくてな」
「……面倒な事って、何よ」
眉間に皺を寄せながら彼の顔を覗き込むと、一瞬だけ私と目を合わせるものの、また直ぐに
「…イヤ、なんでもねーよ」
誤魔化したように、逸らした。
「可笑しな人」瞬く間に私が溜息を吐く。
私と智司は付き合って三ヶ月も経っていない。
彼は高校を卒業したばかりなのに、今まで一度も学校生活での話をしてくれたことが無い。
以前、気になった私がそれとなく聞いてみた事もあったが、その時も今みたいに誤魔化された
。
だけど理由は大体、見当がついている。
彼はきっと自分がヤンチャしてた事を私が知ったら、ショックを受けると思ってるのだろう。
そんなのは初対面だった智司を一目見た瞬間から、彼が真面じゃないことくらい想像できた。
強面な顔も二メートル近くある屈強な図体も、更には恫喝的な喋り方でさえも、普通じゃない
。
誰がどう見たって危険なオーラを醸している。
本人にはその自覚が無いみたいだけど。
「雨、降ってきちゃったね、急ごう!」
突然降って来た大雨に一度は小さな折り畳み傘を開くも、余り意味を成してないと気付づいた私が濡れたく無い一心で、そそくさと走り出す。
「オイ、美和子。ンな焦ってっとすっ転ぶぞ」
忙しなく山道を下っていく私の後姿を悠長に眺めていた智司が、そう言った瞬間だった。
「ーわっ!」「美和子…!」
足を滑らせた私が勢い良く前方へ身を投げ出されるも、全身で泥濘に着地する事は無かった。
「大丈夫ですか、お姉さん」
何故なら泥塗れ寸前というところで、大きな身体をした男子学生に、支えられていたから。
「有難う御座います。…あ、その服っ」
汚れてしまった制服を私が指差すと、何故かその手を取る彼がギュっと両手で握り締める。
「フ、何の此れしき。寧ろ、泥もきっと貴女との出会いを祝福してくれてるんだと思います」
「今井さん、カッコいいっす!」
今井と呼ばれる男の背後にいたお猿さんみたいな少年が、これでもかというくらいに拍手する
。
「それよりも、こんな雨の中一人で危険ですから。宜しければ僕と一緒に観光しませんか?」
拾った折り畳み傘をさり気無く頭上に被せてくれる彼が、有ろうことか私を口説き始めた。
「あ、一人じゃないので…」
「一人じゃないとは…って、ウォ!!?」
暫くは我関せずと私の背後で黙視していた智司が、痺れを切らした様子で終に目の前に現れた
。
「下らねー話は聞いちゃいねぇ。オウ、紅高の番長さんよ。ウチのモンが世話んなったな。」
今井くんの言葉を遮るようにして折り畳み傘を奪い返すと、私の腕を引いて歩き出した。
「あ、本当に有難う御座います…!」
そう言って智司に手を引かれながら軽くお辞儀する私を、二人はただ呆然と眺めていた。
「今井さん、制服じゃないと一瞬わかんなかったですけど…アイツは、開久だった…」
「あ、あぁ…わかってるよ。」
相容れない二人が
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