夢で会えたら19
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おかしい
何かがおかしい…
「そんなに警戒しないで。大丈夫、取って食ったりしないからさ。」
泉水忍は、そう口を開けば涼しい顔でコーヒーを飲む。
自分とテーブルを挟んだ向かいの席に腰掛けながら。
ー…喫茶店で。
なぜ、こんなことにー…
あの後ー…
『俺を知っているね?…話をしようか。』
そう泉水忍は笑顔で言った。
あの瞬間大きく寿命が縮んだと思う。だからか、ちらつく『死』にここは素直に従うという選択肢しかなかったわけで。
「コーヒー、冷めないうちにどうぞ。」
柔らかく笑みを浮かべる忍。
紳士らしい仕草、言葉。
だけど、彼はー…
今、人間界を滅ぼそうとしている張本人。
「……私、人を待たせてるんであまり長居は出来ないんですが。…要件を聞いて良いですか?」
怖い。
逆鱗に触れないだろうか、そもそも帰してくれる気はあるのだろうか。
「なるほど、ゆっくりお茶を付き合ってもらうわけにはいかないわけだ。」
「……。」
「ふふ、すごく警戒、してるね。」
くすりと笑い切れ長の瞳を細めこちらを見る。
「なら、もう一度確認だがー…」
『君は俺を知っているね?』
真っ直ぐに射抜く瞳に、ごくりと唾を飲み込んだ。
「……なぜ、ですか?」
なぜ知っていると思うのだろうか。
飛影との関係を知っているから?だが、それなら私と会う理由は?人質的な役ならば誘うのではなく誘拐できる、彼ならば。
話す必要が、なぜあるのだろうか?
ストーリーに関係のない自分と。
「なぜ、か。…そう答えている時点で俺の質問に君はYESと答えてるも同じだよ。仮にもし本当に分からないならなぜついてきたんだい?ストーカーかもしれないよ、君の。」
「……。」
飛影と関わっている時点で、目をつけられる可能性は高いわけで。だけど一番はー…
「俺が怖かったから。だろ?」
「!!」
「ただのストーカーなら逃げればいいし、出来ないならなんとでも周りに助けを求めれる。それをしない時点で俺の正体を少なからずわかっている。」
「……。」
「俺が人間など簡単に殺せると君はわかっている。」
「…よく、しゃべりますね。」
多重人格だっけ、彼って。
よく話すのは「誰」だっけ…
それにしてもー…
まずくないかな、この状況。
酷く口が渇く。
コーヒーカップを手に取り一口飲むも、正直味が分からない。
それに自分は酷く動揺しているのだと改めてわかる。
「…君は顔に出やすいな。いいよ、本題に入ろう。俺が君を知っていて君に声を掛けた理由。それはー…」
切れ長の瞳がまっすぐにこちらを射抜く。
「君が能力者だからだよ。」
「……??…はい、って、え!?…の、能力者…?」
自分に指を指し彼に再確認をする。
動揺は吹っ飛んだ。
なんだこの展開。
まさか、あのドクターとかゲームマスターとかの、あの能力者!?
「君は不思議なオーラを纏う。」
「え、待ってください。展開が早くて着いていけない。」
オーラって…
次はハンターハン○ーか?
頭を抱え言われた言葉を整理しなければと努める。
「わかりやすく言うならばこの世界には見ない気を纏う。といえばわかるかい?」
「……。」
「君は次元を渡れる能力を持っている。そして適応能力も。…どんな環境下においても自身の存在を確立させる、まさに神のような力だ。おそらく能力で宇宙に出たとしても君は生きていける、誰かに殺されない限りは。」
「…それは流石に無理だと思いますよ、私ただの人間ですから。」
冷静になれ。そこまで出来るはずがない。
「…君のことは調べさせてもらったよ。人でありながら瘴気のある魔界で飛影と生活をし、まれに消える、だが消えて戻る場所はここの人間界ではなかっただろう、今までは。」
「……。」
どこでそんな詳細を調べることができるのだろうか。
「…君は本当に顔に出るな。心を読まなくてもだいたい知れる。」
こちらを見てクスクスと笑う彼。
そういえば人の心を読む能力者がいたような。
…なるほど。すでに全部知られてるわけか。
だけどー…
「仮に、もし本当に私が能力者だとしたら、それがどう貴方に関係があるんですか?私の能力は貴方の役に立つとは思えませんけど。」
とぼけても、遠回しに聞いても、心を読んだ上で今こうして会っているのなら意味はない。
警戒しようと結果は同じならば、もうはっきりくっきりいこうではないか。
まだ怖いのは本音だが、この雰囲気だと、殺される事はなさそうだ。
「君のそれは神の領域といっていい。なんせ君にとってここは漫画の世界だ。君たちが創造した世界にいるのだから。」
ー…本当に色々知られてる。
「俺は君にとても興味があるだけ。それだけだ。この世界の人間の能力者と君は次元も価値も違う。…あと、シーマンのテリトリーを回避できなかったのはただ単に君の力不足だろう、本来なら回避可能なはずだ。」
「……。」
「俺にはわかるよ。」
なんの自信だ、と思うも自分自身、今まで身に起こった状況の原因を分からずにいるのは確かだ。
だけど、一つだけ分かっていることもあった。
「私に能力があるのだとしたら、それはきっと単純なものですよ。」
そう、これだけはわかる。
「たった1人だけ、その人の側に居たいと願ったから…それだけの為の力だと思います。だから…その人がその世界にいなければ私はそこで存在を確立させるのは無理だと、そう思います。」
そうだ、この世界に馴染むまで、飛影の側ばかりに私は現れた。まるで何かに引き寄せられるみたいに。
「…あの男か。なるほど、君のそれは愛故の力だと。」
「愛には自信があります!!なんせ彼が子供の頃から仮親してるんですから!会えなかった時期も一杯ありますけど……、うぅ、いきなり成長を目の当たりにした時は辛かったですけど。」
先日の一件を思い出してか、一気に顔が熱くなる。
あぁ、私今真っ赤な顔してるかも。
「……親?…彼は君の恋人だろう?」
怪訝そうに眉を寄せこちらを見る泉水。
「え!?ま、まさか!!そりゃ、今は年もそんなに離れてないですが、それはないかと。」
「……ぷ。くくくっ…彼が気の毒だな。君の事、好きだと思うけど。」
「えぇ~…ないない。」
あれ、泉水忍が笑ってる。
そして、なんだろう。この和やかムード……あれれれ?
「大分、警戒を解いてくれたね。今日は単純に君と話したかっただけなんだよ。なんせこの世界を作った場所にいた人だ。神の様な存在だろう?…俺の価値観を押し付ける気はないが、俺はこれから俺のやりたい様にする。それが上手くいくいかないは君は知っているかもしれないが…」
「俺は確かに今生きている。」
「……。」
「君が知るシナリオは知らない。聞く気もない、だが俺は必ず成功させる。例えー…」
意思の篭った瞳がこちらを射抜く
「君の知るシナリオと違う道でも、俺は必ずやり遂げる。…俺は、まだ生きている。」
ー…あぁ、また揺らぐ。
私はシナリオ通りに進むと…分かっているのか願っているのか…
ただただ、彼の瞳が私の胸の奥にしまっていた不安を呼び起こす。
「それは…困るんですけど。」
彼は私の不安な部分まで分かっているのだろうか。
「これは、神々への戦線布告だよ。」
泉水忍は微笑んで言った。
自分が神になるの、だと。
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