夢で会えたら18
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ブン
ブン
「489、490…」
汗が日光を浴び、輝き飛び散る。
早朝の静かな公園には、竹刀を手に素振りをする女の姿があった。
自宅には同居人がいる為、部屋での素振りは気が乗らない。それに我が家の同居人は自分が鍛錬することにあまり良い顔はしないのだ。
「500!!」
女は竹刀をベンチの端に立て掛け、どさりとそこに座り空を仰ぐように凭れる。
ー…だめだ。
晴れないわ。
どうしよう、と呟き頭を抑える女ー…愛音の脳裏には昨夜の出来事が過る。
色んな経緯?を経て、彼に押し倒される?形になった自分。
それは決して色気を含んだものではない。
だが、大事な話をしていた。
彼は私に強くなる必要はないと言い、私は彼の側にいたいからこそ強くなりたいのだと言った。
折り合いはつかないままだったが腹が立つわけもない。逆に心配してくれる彼に心が温かくなった位だ。
彼の頬に当てた手。すべすべだなぁと思いながら自分の気持ちを伝えつつ撫でた。
撫でればピクリと動く彼の目元に一瞬不快だったのかと心配したが払わない彼に違うのだと理解した。
次第に細まる赤い瞳。
赤は私の瞳を捕えながらも緩やかに下がり、見慣れた赤い瞳が妖しい色を含んだ気がした。
そして、なぜか逸らそうとする赤にどこかムッとした。
大事な話なのだからと、まだ終わらせる気などさらさらなかった為、耳を引っ張り顔を戻した。
その瞬間。
ざわりと胸が騒いだ。
赤を支配する熱を含んだその瞳に。
落ちてくる感触に…。
その後はー…
ーーー
ーーーー……
ミーミー…
黒い塊がベットで寝ている飛影の髪を噛みながら引っ張る。
彼は面倒そうに重い瞳を開け、黒い塊、否子猫の首元を持ち上げ見上げる。
「……。」
どこか不機嫌さを含んだ赤い瞳。
ミーミー
昨夜あの後すぐ、この子猫の鳴き声で我に返った愛音。
バッと身を起こし、猫の餌がなかったと慌ててやりに行った彼女。
まるで何事もなかったかの様な飛影の放置。
しばらく猫を構えばそろそろ寝ようか、と普通に言ってきた彼女に飛影が目眩を覚えたとは言うまでもない。
「また腹が減ったのか?よく食べるな、お前。」
はぁと息をつき身を起こす。
同居人は朝から一人稽古だ。早朝から竹刀を持って出て行った。←邪眼で確認済み。
猫に餌をやりながら先日の事を思い出す。
御手洗と桑原の戦いに首を突っ込み危うく死にかけたあいつが意識を取り戻した時に迫ってみた時のことだ。
あの時のあいつは確かに動揺を見せた。
真っ赤になり狼狽えていた。
なのにだー…
実際接吻をしたにも関わらず、この今の関係は…、状態はなんだ?
どこかイライラする飛影。
そしてそんなスッキリしない思考から約10分後、朝練?から戻って来た彼女というとー…
「あ、おはよう飛影。朝弱いのに今日は早いのね。シャワー浴びたら朝ごはん作るからちょっと待ってね。」
「……。」
「ん~?おはようが聞こえないぞ~??」
「…おはよう。」
ー…本当になんだこれは。
「よくできましたぁ!さてシャワーシャワー。」
笑顔で脱衣所に入っていく愛音。
そんな彼女の姿が見えなくなれば飛影は額に手を当て天を仰いだとは言うまでもなかった。
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