夢で会えたら16
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街頭も少ない帰り道で聞こえた鳴き声
ミー
ミー
どれ位鳴き続けていたのだろうか
掠れた小さな鳴き声はそれでも止まず自分の居場所を必死に伝えている様だ
否、それは誰かにではなく
母親に向けたものだろうか
ゴミステーションの近くに置かれた段ボール箱
残酷な優しさは酷だ
そう思う
可哀想と抱き上げ餌をあげ、その場だけ可愛がって放置するのならばそれは酷く残酷だと思う
拾えないのなら見てはいけない
飼えないのなら手を差し伸べてはいけない
ミー
ミー
必死な鳴き声に胸が疼く
眉が寄るー…
中途半端な優しさは残酷だと
分かっているなら立ち止まってはいけないのだー…
「なんだ、それは。」
帰ってみれば、同居人が怪訝そうに眉を寄せ女が抱いているそれを見て言う。
「…拾った。」
「ここはペット可能だったか?」
「ううん、でも…触っちゃったし。」
「??」
何を言ってるんだ?と首を傾げる男は再び自身の赤い瞳を彼女の腕の中のそれに落とし、瞳を細める。
「…死にかけてるぞ。」
「!?、やっぱりそう思う!?」
そう叫べば、女はバスルームに走りタオルを何枚か出し、腕に抱いていたそれに巻きつける。
ちょっと持ってて!!と、男にそれを渡せば女は台所へ急いだ。
男の腕の中には、小さな黒い物体が丸くうずくまったまま、声も上げずブルブルと酷く震えていた。
「これでいいかな、少しはあったかくなると思うんだけど。」
湯たんぽをタオルで包み、タオルで包んだソレの側に置く。
「蔵馬君、来てくれるって?」
「さぁな、そろそろ使い魔も戻ってくる頃だろう。」
捨てられていた小動物の為に蔵馬を呼ぶことを当初渋っていた彼だったが、目の前の彼女が必死に頼み込んでくるものだから渋々使い魔を送ったのがつい先ほど。
「がんばって、まだ死んじゃだめだよ。」
そっとタオルの上から摩る。
「さっきまであんなに必死に鳴いていたのに…どうしてだろ。」
うるっと潤む彼女の瞳。
同じ様にそれを見下ろしていた赤い瞳が微かに上がる。
「……お前が、抱き上げたから安心したんだろ、きっと。」
「え?」
「もう鳴かなくてもいいと思ったんじゃないか?無理しなくてもいいと。」
「……私、迷ったんだよ??拾うの。見捨てようと思ったんだよ?」
唇を噛み締め眉を寄せる彼女。
「だけど、無理だったの。触っちゃったから。」
「……。」
「…期待させてごめんなさいはしたくなかったから。」
「…そうか。」
「私、小さい頃捨て猫を見つけて、可哀想だし可愛いし拾って帰った事があったの…。でもね、結局母の反対で飼えなくて元の場に戻しに行ったんだ。……その時ね、私悲しくて悲しくて泣いたんだけど、子猫の方はそんな比じゃないよね?むしろ何でお前が泣くんだ、て思われててもおかしくなくてさ。その子は生まれたばかりでまだ誰かを頼らなくちゃ生きていけなくて、助けられないくせに下手に手を差し伸べて裏切るとか、私最低だなって。…だから、それからは捨て猫とか気付いても見て見ぬふりしてきたんだ、中途半端な優しさは逆に残酷だから。…だけどね。」
「……。」
「この子は、無理だった…。」
それの背を再び撫でる。
「……責任もって飼おうと思う。マンションも、変わっても構わない。…あっ!震えが止まってる!呼吸も落ち着いてきたよ!飛影!!」
次の瞬間、ぱぁっと輝く女の顔が彼を見る。
そしてー…
ミー…
微かに声を上げる…真っ黒な、子猫。
よろりと立ち上がりこちらを見上げる。
まん丸の赤み掛かる子猫の瞳が男の赤と絡まった。
それに男は何か思うことがあるのか複雑そうに眉を寄せるのだった。
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