夢で会えたら16
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私は何度あの子に心配をかけさせたら気が済むのだろうか。
一度目は魔界で赤毛の男に拉致られ犯されそうになった時、二度目はタブーの屋敷につっこんで自爆した時。
そして、三度目はー…
御手洗と桑原の戦いのシナリオに姿を表してしまい危うく死にかけた今回だ。
一度目は別としてもあと二件は確実に自分から首をつっこんだ。
反省すべき点。
わかっていたはずなのにー…
結局、桑原が御手洗を倒した為、シナリオは通常通りに進むのだろう。
「…はぁ。」
ベッドから上半身だけを起こし愛音は布団を握りしめる。
窓から入る微かな朝日が手にかかる。
変わらないシナリオ。
わかっていたはずなのに。
…わかっていた?
ううん、わからなかった…
桑原が死ぬんじゃないかと、その後のシナリオまで変わるのではないかと思ったんだ。
飛影の自分を責める顔を見る度自分の行動を反省させられる。
だけど反面嬉しくも感じるから困ったものだ…
あぁ、でも。
辛く苦痛に耐える顔は、やはり好きではない。
魔界では強くなると決めたのに、それが人間界に戻ってからはどうだ?…環境に絆されている。幽白の世界には違いないのに、甘くなり過ぎだ。
せめて自分の身は自分で守らなくてはいけないのに。
「情けないなぁ…私。」
それでも、とりあえず身を引き締めないと。
人間界自体にそうそう危険はない。だが、彼らと関わった時点で少なからず覚悟は必要だった。
いや、私が彼の側にいたいのだから仕方が無い。
「よし!!」
パンッと両頬を叩き喝を入れた。
「…飛影、ちゃんと聞いてますか?」
「…聞いている。」
それは蔵馬の部屋での事。
飛影の腕に包帯を巻いて行く蔵馬。しかし白い包帯が血で滲むそれに彼は眉を寄せ手を止めた。
「…こんな深い傷。貴方はこの大事な時期に一体何をしてるんですか。」
呆れながら「もう一回薬草を重ねます」と再び外しにかかる。
「……。」
「……。…自分を傷つけて楽しいですか?」
ぽそりと呟く狐に、飛影の赤い瞳が細くなる。
「……。さっさと巻け。」
「…飛影、強くなる事に焦りは禁物だ。無理な鍛錬は身を滅ぼす。…貴方のそれは下手をしたら死にますよ?」
「俺が下級妖怪に殺されるわけがない。」
「自分に枷をつけて戦うのは構いませんが、限度があります。貴方はやり過ぎだ。」
蔵馬の耳に入ったのは最近人間界で悪さをする妖怪を片っ端から葬る邪眼師の噂。
それは人間を救う善意ではない。
邪眼師は自身の体に枷を強い、わざと負担を掛け戦うという。
「…まぁ、仙水の所に飛び込まないのだけは救いですが、限度を考えて。」
実際ひどい傷を負い最近蔵馬の部屋の出入りを繰り返している飛影。
蔵馬が心配しないわけもない。
「…彼女は、知ってるんですか?」
「……。」
「邪眼、か。便利ですね。」
傷を見えなくする術でもあるのか。蔵馬は再び息を着く。
「…あいつには言うなよ。」
「わかってますよ。…不器用だな。」
「…お前に言われたくないがな。」
ハンッと笑う飛影。
彼の視線がカーテンの閉まったベランダに向けられればー…
「秀ちゃん、いる~?」
隣に住む秀一の幼馴染だという女の声が外から聞こえる。
「ほら、お呼びだぜ、『秀ちゃん。』」
ニヤリと笑みを浮かべる飛影。
「……。」
「お互い様だろ。」
「……何がですか。やめてください。」
彼女は何も関係ありませんから。と目を伏せ包帯を巻く手を動かす秀一だった。
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