夢で会えたら15.5
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ー 15話愛音side ー
愛しくて懐かしい夢を見た
夢だとわかっていたから意識が浮上していくのが残念で
でも、目覚めればきっと大きくなった彼に会えるのだから構わないと思った
私は、ゆっくりと瞳を開けた。
虚ろな視界に入る黒い髪と赤い瞳。
それが徐々に形を形成していく。
「ひ、えい…」
「愛音…、大丈夫か?」
視界に入るのは、まるで苦痛を耐えるかの様な飛影の表情だ。
そして、その表情に重なるのは幼い少年。
静かに涙を流していたあの子だった。
「…泣いて、たの?」
だから思わず聞いてしまった。
「……。」
眉を潜める飛影。
泣いてなどいない。
彼の瞳はどこか怪訝そうにそう語るも言葉にすることはなかった。
どこか困惑した表情になぜか愛おしさが溢れる。
あの夢を見た後だからだろうか。
私の事で先程から表情を曇らせたり安堵したりするそれに言いようもなく胸が暖かくなる。
気付けば手が飛影の頬を撫でていた。
「私の事でも、そんな顔…してくれるんだね、飛影。」
嬉しかった。
涙を流して欲しいわけじゃないけれど、彼の中で少しでも意味のある存在になれたのだと思ったのだ。
ー…そして、こんなにも能天気な思考でいられるのも今命があるからだ。
今更だが、この状況からやはり桑原くんが私を助けてくれたのだろう。
意識を手放した直後、彼の声を聞いた気がした。
「…一体俺がどれだけ心配したと思っている。」
あ、ちょっと思考が飛んでいた。
目の前の彼はどこか少し不機嫌そうだ。
それでも頬に添えた手に彼は自身の手を重ねてきた。
……猫みたい。
懐くと可愛さ倍増だ。
「飛影って、初め無愛想だと思ったけど…結構コロコロ表情変わるよね。」
猫とは言わないでおこう。
それにしても…
飛影の手がまた大きくなっている。私の手がすっぽり隠れてしまっているのだ。
…しかも、前よりごつごつして骨ばってきている様な気がするのは気のせいだろうか。
「…お前が能天気すぎるからだ。危機感を持てと何度言ったらわかる。」
「ふふふ。」
「何がおかしい。」
赤い瞳が不機嫌そうに細くなれば、はぁ~と深く息をつかれる。
「勘弁してくれ。」
赤い瞳がこちらをじっと見据えた。
彼の成長が嬉しい反面、なぜか寂しく感じるのはどうしてだろうか。
…夢の余韻があるから余計かもしれないが。
「……。…私、貴方みたいな子供欲しいな。」
「……。はぁ?」
…珍しい表情だ。
本当に呆れた顔をしている。
「子供の頃の貴方の夢見たの。ほっぺたなんかぷりんぷりんで目なんかパッチリ可愛くて、もう食べちゃいたい位で…あぁ、もう一回見たいな、飛影の子供の時の夢。」
思い出すだけでお腹一杯だ。
「お前は俺の子供が欲しいと?」
「…うん??飛影の子?確かに飛影の子供なら似てそうだけど。」
何を言っているのだろうか?
貴方みたいな子、あぁ、みたいだから自分の子に繋がるのだろうか?
いやいや、むしろ飛影がいいんだけどね。チビ飛影が。
何か一瞬考える様に瞳を逸らした飛影だったが、次の瞬間こちらをみてニヤリと笑みを浮かべた。
そして、ベットに手をつき身を乗り出してきた彼に何事かと思う。
「俺の子供が生みたいなら協力してやるぜ?」
「…え?」
「俺ももうガキじゃない、試してやろうか?」
低く色香を含んだ声に、ギラリと光る細められた赤い瞳に思考が一瞬で停止する。
ー…え??
……。
……誰だ、これ。
そして、頭の中で彼の言葉を復唱してみる。
……ふむ。
………ん?むむむ。
………!!!!!!!
な、なにを言っているのか!?この人は一体誰だ?本当に飛影??
「え、あ、あの…ま、まままだ飛影には、は、早いんじゃな、ないかな、そ、そそそそそうゆうの!!」
一体どこからその色気のある低い声と雰囲気を出た?
そして、なんださっきの眼差しは!!
いやいや、なにを驚いてる?!
こっちが驚くわ!!!
いきなりの不意打ちの彼の雰囲気に一気に平常心も崩れた。
子供がいつの間にか大人になるとはこういうことか!??
「…飛影、か、からかわないで?いいかげん、ど、どいてもらえないかな?」
とりあえず教育上、この感じは決して良くない。
絶対良くはない。
顔が猛烈に熱い気もするが気のせいだ、気のせい。
いくら男性に耐性があまりないといっても目の前にいるのは飛影だ。
いくら艶かしい雰囲気を出そうとも、色気ある低い声で囁かれ見つめられようとも、彼は彼だ。
今目の前にいるのはハンバーグを美味しそうに頬張るあの可愛い飛影のはずなのに…
こちらを見下ろす飛影の瞳が徐々に細くなれば、同時に熱が籠っていくように見えた。
逸らすなとばかりの熱を孕んだ赤い瞳がまっすぐに射抜き、落ちてきた。
「ひ、ひえい?ちょっと待っー…」
そして、心臓が破裂しそうになった瞬間ー…
「ばっきゃろ~!!!人ん家でなに盛ってやがる!!帰ってやれ~!!!」
真っ赤な顔をした幽助がもう我慢ならんとばかりにドアを開けたのだった。
ー 15話愛音side完 ー
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