夢で会えたら14
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全てが
原作通りに進むのだろう
自分が知っている原作と同じ様にー…
ゆるやかに
時に激しく戦い
それでも幽白メンバーは健在に、ひとつひとつのコマを進めて行くに違いない
表面は何も変わらない日常。
そんな折、飛影から最近の事を聞いた愛音。
つい先日「大凶病院」の神谷を幽助達が倒したらしい。
あのドクターの能力を持つ病院内をテリトリーにしたあの変態医者だ。
直接関わっていない出来事な為、今、そこらへんなのか。位の感想だ。
それに、飛影の側にいる彼女自身は彼が関わらない戦いは見ることもないだろうとさえ思っていたから余計だった。
そう飛影は前半の戦いには姿を見せない。
毎日家では一緒なので日中に何をしているのか知らないが、基本群れる事を嫌う彼らしいといえばらしい。
このままいけばおそらく、魔界の穴編をクリアして、そう遠くない内に魔界に行くのだろう。
そう、寂しくともどこか他人事のように考えていたのだ。
私は見守ろうと。
そう思っていた。
だからー…
雨がざぁざぁ降り注ぐ
傘を忘れた愛音は普段通ることのない道を走っていた。
近道な為普段使うことのない道だ。
たまたまだった。
残業もたまたま。
そう全部偶然だったー…
「沢村を離せ!おれを狙ってんだろ!サシでやってやるぜ!」
その聞いたことのある声と、異様なその空気に顔を上げる愛音。
目の前の光景に目が見開く。
雨が、水が形を変え人型となり「桑原」達を襲う。
水で出来た怪物のすぐ横に佇む少年の名は「シーマンの御手洗」だ。
愛音は直ぐに近くにある電信柱に身を隠す。
(嘘!?ここで、このシーンなの!??)
バクバクなる心臓。
目の前に起きている光景は漫画やアニメで見るものと、やはり違う、リアルなものだ。
「スカしてんじゃねーよ!馬鹿野郎がー!!」
御手洗が手に持つナイフで水の化け物に捕らえらた桑原の仲間の足を刺す。
痛みに叫ぶ声と、御手洗のさらに酷くなる罵声。
(心臓に悪いっっ!!)
思わず自分の足を摩る彼女。自分ではないのに錯覚を起こすこの心理は致し方ない。
桑原は仲間を見捨てない。
御手洗がどんなに桑原の体を、心を痛め付けようと、情の深い彼は仲間を見捨てないのだ。
それが最後、桑原が霊力を取り戻すきっかけになる。
だからこれは必然、必然なんだ。
進んでいく場面。
血だらけでそれでも立ち上がる桑原。
TV越しならば、漫画越しならば仲間思いな彼に情の熱い彼に涙腺が緩む、その程度だったに違いない。
だけど今はー…
いや、しっかりしろ私。
どんなにリアルでもこれは必要なことー…
そう彼女は自分に強く言い聞かせる。
「やめろぉー!!」
仲間が皆、水の化け物に呑まれる。桑原の悲痛な叫び声が心臓を抉る。
(ー…必要なこと、我慢しろ、私。
私が動いた所で何も変わらない!!)
ー…変わらない。
そして、桑原さえも呑まれれば、彼も中で足掻く。
そうここからだ、ここから。
桑原が必死にテリトリーから出ようと足掻いて、そして御手洗を倒すんだ。
強く両手を合わせ祈る。
早く、早く。テリトリーを打ち破って。そう思いを込めながら。
「まさか、お前が僕たちの探していた、次元を切り裂く能力者…!?」
御手洗の顔に付けられていく幾つもの傷。
彼の震える声が届く。
もうすぐ、もうすぐだ。
しかしー…
がくん。
「!!!」
「はは、次元を切れても、そこまでではないのか…なんだ、ははは。」
なに?これは…
視界に入るのは水の怪物の中に浮かぶ桑原とその友人三人の姿。
力尽きた様なその姿に彼女の背に嫌な汗が流れる。
「やっとくたばりやがったか…ははは。ははー…」
御手洗の乾いた笑いが耳に響く。
違う。
違うわ。
なんで?
どうして??
「ははははっ…低俗な仲間意識に絆されて結論これじゃただの無駄死にだなぁ。」
御手洗の心無い言葉に頭の奥が一気に冷えた。
どかっ!!!
「ぐわっ!」
吹き飛ぶ御手洗。
「早く…」
御手洗の前に立ちすくむ女。
たった今御手洗は背後からこの女に殴られ倒れたのだ。
「な、なんだ、お前!!」
「早くテリトリー解いて!!早く!!」
放心する御手洗の襟元を掴み乱暴に降る女。
それは愛音だった。
考える余裕はなかった、これ以上放置すれば桑原達は死んでしまう、その現実が彼女を突き動かしたのだ。
必死な彼女の顔に、御手洗は一瞬呆気に取られるものの、直ぐに笑みを浮かべた。
「あんた俺のテリトリー内にいつからいたの?…てか、あいつらならもう死んじゃってるよ?」
「早くとけ!解かないならここであんたの首締めて殺すわよ!?」
「はは、おもしろい女。いつからいたのか知らないけど…」
にたぁと御手洗の笑みが深くなる。
「!!」
瞬間、背後から来た水が彼女を襲う。
(しまった!!)
そう思うも、すぐに取り込まれる。
ごぽっと口から出る空気。
(息が…!!)
「ははははは、とんだ災難だねお姉さん!馬鹿な正義感振るうからこんな事になるんだよ、今謝るなら助けてあげるよ?どうする?隣にいる奴みたいになりたくないでしょ??」
隣に浮かぶのは桑原。
(桑原…まだきっと生きてる、外に…外にさえ出られれば!なんとか!!)
水の中で必死に足掻く。
外に
外に出たい
苦しい
(桑原!起きて!!…諦めないでよ!!)
どんどんと隣の桑原の胸を必死に叩く。
(貴方は根性だけは誰にも負けないんでしょ!?)
だがー…
ごぽり。
彼女の口から再び気体が上がる。
体から力が抜けて行く。
(…飛影が、家で私が帰るの、待ってるのに…)
そんな事を思ったが最後、彼女の意識は途切れた。
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