夢で会えたら14
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「どうもね飛影、…今更なんだけど、私、貴方の世界の住人になっちゃったみたいなの。」
それは休日のある昼下がりのレストランでの事。
たった今、目の前に運ばれてきたハンバーグを食べようと飛影がフォークを手にとった矢先。
目の前の彼女は深刻な顔つきで飛影を見据えながらそう言った。
あ、食べて食べて、中断させてごめんね。と飛影を見ながら、どうぞどうぞとハンバーグに手を向ける愛音。
「……。」
一度止まった彼だったが、素直にぱくりとハンバーグを口に運び食事を進める。
「…ひさびさのランチなのに、初っ端からこんな話でごめんね飛影。ずっと言おうと思ってたんだけど。不可解な事が多すぎて纏まらなくてさ…。」
少し困った様に眉を寄せる彼女。
「……。」
飛影の脳裏には先日の蔵馬とコエンマとのやり取りが蘇る。
『この世界の住人ではない』
『本来存在しない』
『この世界が彼女を受け入れている』
結果、害がないのであれば問題ない。
しばらく様子を見るという結論に達した事柄ではあったが…
「不可解とは、なんだ?」
「…うーんとね、類似している事もたくさんあるんだけど、明らかに違うこともあって…。なんていえばいいのかな、あなたの世界に私の世界が混ざっているというか…。…不便も感じないし、友人や親だっているし、はじめは自分の世界だと思ったくらいなんだけど。見たこともない場所や知らない地域があったり、それに馴染んでないのはどうも私だけみたいで。……貴方の載っていた書物もないの。」
それってもうここが貴方の世界決定ってことじゃない?と首を傾げる彼女。
ー…私一人だけ来た感じなんだろうなって。
と憂いを含む笑みを浮かべるそれに飛影の眉が微かに寄る。
知っている世界ではない。
書物の中の世界。
彼女にとって、ここは異質。
いくらこの世界が受け入れているといっても彼女自身が望んだ事ではない。
飛影の視線が自然と落ちる。
「……私が願ったから、なのかなぁ。」
だが、思いもよらない彼女の言葉に赤い瞳が上がる。
頬杖を付き、切なげにこちらを見て微笑む彼女。
「飛影に会いたくて、貴方が心配で…ずっと考えていたもの。だから、神様が今の私の生活スタイルとか環境を変えることなく、あなたの世界に馴染ませようと考慮してくれたのかなぁ。」
「……。」
「って思うんだよね、最近。」
へらっと笑う彼女に飛影の瞳が見開く。
手から滑り落ちたフォークに気が行くわけもなく、ただまっすぐに彼女を見つめる飛影。
「なにやってるの?」と笑いながらフォークを渡してくる彼女に、飛影に言いようもない感情だけが身に巣食う。
その頃、ちょうど彼女の食事も運ばれてくる。
「…それにね。」
頼んだパスタにフォークを巻きながらつぶやく愛音。
「不安じゃなかったって言ったら嘘になるんだけど、飛影が側にいてくれるならむしろこっちの世界の方が安心するみたい。実際、ここが違う世界でもあなたがいるってわかった時点で焦りより会えることを願ったし。」
「……。」
「…依存しちゃってるなぁ、私。」
へらへら笑う愛音。
それに、ちっと舌打ちをする飛影。
「あぁ、なんで舌打ち?ひどくない?」
「……改めてお前の無自覚さに腹が立つ。」
赤い瞳は呆れと不機嫌さを含み彼女を見据える。
「え?なんで?私、飛影LOVEっていってるだけだよ?」
「……。」
それに、なぜかさらに不機嫌そうに眉を寄せ睨みつめる飛影に、はて?と首を傾げる愛音だった。
そしてー…
彼女達から少し離れた場所ではー…
新聞を片手に、コーヒーを口に含む長身の男がいた。
長い足をテーブルの下で組んだ男の視線が静かに新聞から上がる。
切れ長の鋭い視線が一点だけを見つめる。
ー…彼女、愛音を。
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