夢で会えたら13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
長い廊下を歩く黒ずくめの少年
人気の少ないその通路は神聖な空気が漂う。
ー…霊界。
霊界は魂を裁き、導き清める場所。そこを治めるであろう者と会う為にはこの吐き気のする場所を通らなければいけない。
汚ないものを隠し、綺麗なものだけを表に見せる霊界。
悪と善に分け魂を裁く霊界。
人は豚や牛などを食べても裁かれないが、妖怪は人を食えば裁かれる。この妖怪目線の食物連鎖は霊界では罪となる。
だからこそ人間界と魔界、霊界が個々で存在すると分かるものの、妖怪からすれば厄介な場所だ。
彼自身、人食の類の妖怪ではないもののだからといって好意ある場所ではない。むしろ人間界で以前悪事を起こした彼にとっては出来れば来たくない場所である。
そんな彼が足を運んだのには理由があった。
ーー
ーーー…
「ふんふんふ~ん、ふんふんふ~ん。」
デスクではカタカタと機嫌良くパソコンを打つ女の姿。
「いやにご機嫌だね。愛音、何かあったの?」
そんな彼女に、向かいの席に座る同僚が声を掛ける。
「いやぁ~最近満たされててね。毎日がハッピーなのよ。ふふふ。」
「うわ、もしかして出来たの?彼氏!」
「まっさかぁ。しいてゆうなら可愛い息子が帰ってきたって感じかな!…あ、あれだよ、甥っ子が今来ててさ、家に。」
リズミカルに書類を処理して行く彼女、愛音。
データチェックに入力処理。
電話がかかれば機嫌良く取る。
「へぇ~かわいい甥っ子、ねぇ。」
もちろん、彼女の言う甥っ子は飛影のことである。
「もうツンデレで可愛いの!目に入れても痛くない位…!!あぁ、食べちゃいたい!」
いやん!と両手を合わせ頬を赤らめる愛音。
「……。犯罪者にはならないでね。」
「あぁ~早く帰らなくっちゃ。」
「……。甥っ子より彼氏作れよ、彼氏。」
呆れた同僚の声は彼女には届かないでいた。
あれから愛音のアパートに一緒に住んでいる飛影。
定まった住処がない彼に、是非一緒に住もうと愛音が強く押せばあら不思議。しばし間があくも素直に頷く彼に愛音は飛び上がって喜んだ。
何でも言ってみるもんだ、と彼女の心の辞書に刻まれた位だ。
愛音は出来るだけ飛影といたかった。
そう遠くない将来に彼は魔界に行くのだ。強くなる為に躯の配下となる。
それを知るのはもちろん彼女だけだ。
そして、それに至るまでも沢山の出来事は起こる。
愛音は自分と飛影が関わることで彼の生き方が、進み方が変わるのが恐かった。
もちろん変えたかった部分もあった…
邪眼の移植もその一つだ。
そう簡単に原作は変わらないのだと思う反面、見たこともない出来事が起これば彼の存在自体がなくなるのではと心配したこともあった。
だが、再び出会い原作とは簡単に変わるものではないのだと改めて思い知らされた。
杞憂だったのだ。
飛影に今までどうしてきたのかを聞けば漫画で読んだ通りの出来事ばかりを聞く。
自分の存在一つでは変わらない。
ならば次こそは見守ろう。
原作通りでも。彼の心に少しでも温もりを残して、愛情を与えられればと。
自己満足で、独りよがりの思いなのかもしれない。
それでも彼が嫌がらず受け入れてくれるならば共にいる間だけでも精一杯ありったけの愛情を与えたいと…
彼女はそう思うのだった。
.