夢で会えたら12
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『ー…彼女が貴方の大事な人ですね、飛影。』
狐が俺にそう言った。
一度目は失敗したあいつも、何度かその後トイレに駆け込んでる間に狐が俺に笑みを向けながら言ったんだ。
『不思議な人ですね。彼女、僕にも会おうとしてたみたいだし…。』
あまり狐に興味を持たせたくはない。
元盗賊のこいつは、珍しいものを好む習性がある。
『ー…嫌だな。睨むなよ。貴方を敵に回したくありません。ただの興味ですよ、飛影。』
『それにー…
俺は人間にそんな感情、持ちたくもありませんから。』
どこか憂いを含んだ翡翠の瞳が揺れていた。
狐は最近『人間』を強調する。
はじめは気にもしなかった。
種族、寿命の違いを俺に言っているだけなのだろうと。
だが、違った。
共にいればわかる。
狐はある特定の『人間』に対して酷く執着していた。
『彼女』が側にいる時の狐は明らかに知っている狐ではない。
『彼女』を愛しそうに目で追うその翡翠の奥には必ず苦痛が混ざる。
『類は友も呼ぶのかな…俺も貴方も茨の道が好きなんですね。』
何を
馬鹿馬鹿しい。
色ボケも大概にしろ。
どうも狐は『人間』の女に惚れている様だ。
幼馴染だという隣に住む女に。
同じだと言う狐に、鼻で笑う。
惚れてる、など馬鹿馬鹿しくて笑えるぜ。
恋など愛など俺に分かるはずがない。
ただ、無くしたくなくて
それに触れているだけで満たされて
だけど、さらに奥に触れたくなる
ただ、それだけだ。
そう、ただそれだけ。
月明かりが窓から差し込む。
薄暗い部屋に小さな寝息。
ベッドでは布団に包まり気持ち良さそうに頬を緩ませ寝ている女。
それを隣で枕に頬杖をつきながら見る俺。
こんな光景を見たのは何年ぶりだろうか。
魔界の穴が開くという自体で霊界も人間界の一部もかなり混乱している。
慌ただしく決して安全とは言えない状況でー…
なのに、ここだけは。
彼女の頬に触れてみる。
滑らかな柔らかい肌が指に吸い付く。
「お前といると色んな事がどうでもよくなるな…」
触れたいのはどうしてか
その瞳に自分だけが映れば酷く満足するのはなぜか。
これが別のモノを見、感情を揺さぶられる様を見ると酷く不愉快になるのは…
これが傷付けば己の内が言いようもなく痛むのは
疑問ばかり浮かぶ。
どんなに考えても答えが出ない。
ただー…
「う…ん、ひ、え…」
むにゃむにゃと口を動かす女を見つめる。
「ひえい…ふふ」
名を呼び笑みを浮かべるこいつを見ていれば穏やかな気持ちが一変に掻き乱されるのだ。
熱が急速に身に巣食う。
俺は傷つけたいわけじゃない、こいつを。
触れたい衝動は変わらない。
それだけは明確過ぎて、自分でも嫌になった。
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