夢で会えたら9
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「愛音、ねぇ愛音ったら!聞いてる!?」
それは当たり前にあった日常。
「うん、聞いてる聞いてる、営業の原田さんが格好良いから付き合いたいのよね、うん、良いと思うよ。頑張れ!」
目の前の同僚にうんうんと頷きながらパスタを頬張る。
ただいま、日常。
それは、当たり前にあった人間界での日々。
否、そもそもこちらには魔界などないのかもしれないのだから、人間界というのもおかしいか。
ー…あれは漫画の中の話。
ここはリアルな世界。
そう、それだけだ。
仕事の昼食にと、職場の近場の洋食屋にて腹を満たす同僚と自分。
平和だからこそある余裕。
精神状態はひどく安定。
たわいない話、恋話を話す、聞くこの空間。
ゆったりと、しかしせわしなく流れていく時間。
余裕があるはずなのに、平和なのに、なぜせわしないのか。
落ち着かない。
平和なのにー…
「愛音は好きな人いないんだよね、あんた人生損してるわ。恋せよ乙女!!」
「…今はしてないだけです~。」
恋云々など今はどうでも良い。
視界の端に映るパステルカラーに、一旦、フォークを止めガラス越しに見える風景に視線を止める。
赤、黄、緑の風船が舞い上がる。
その下でわぁ~んと泣きながら手を伸ばす子供。そばにいる両親。
「あ~あ、風船離しちゃったんだね。かわいそうに。」
私につられ視線を窓辺に移していた同僚は泣いてる子供を見てくすりと笑う。
「……そうだね。」
「いいなぁ~、子供は。悲しかったら泣いてムカついたら怒って。感情のまま生きられるのはそれを許して甘えさせてくれる人がそばにいるからなんだよね、きっと。」
「…。気を許してるって事?」
おっと、こっちに食いつくか。…恋話は興味ないくせに。と笑う同僚。
「気を許すって言うか、結局さ、叱っても怒っても、ほっとけないでしょ?自分の子って。無償の愛だよ、見返りなくても世話焼きたいし大事にしたい。それが子供も幼いながら分かってるんじゃないかな?だから、甘えちゃうんだよ。きっと。」
「……。」
ー…泣きたくとも泣けない人。
感情を表にそう出さないあの子が脳裏に浮かぶ。
ー…飛影。
あれから三ヶ月経った。
いくら眠っても彼の側に行く事はない。
あれは夢だったのか、と思える程日々過ぎていく。
会いたいなぁ~…
漫画もない。
インターネットにも情報一つない。
まるで、存在自体が始めからどこにもない様な程だ。
ここは一体どこなのか。
そう思わずにはいられない程、自分の世界にさえ疑問に思った。
同僚との他愛無い会話の中、再び自然と視線が窓辺に行く。
両親に頭を撫でられている子供。
母親に抱きつく幼い子…
そして、その背後遠くに見える…
-…洋館??
「…ねぇ、あんなの、あったっけ?」
「ん??」
「ほら、あの向こうに見える変な家。」
ビジネス街から少し離れたこの場所は確かに住宅もちらほら。
だが、そのなかでも異質な雰囲気をかもし出す、ひとつの物体。
その家はかなり異質な雰囲気を醸し出していた。否、なぜ今まで気付かなかったのかがおかしい位だ。
家の壁に目が書かれていたり、屋根をわざと傾けていたり…
ピカソの絵を家にしたような。
とにかくなんとも説明しがたい家なのだ。
「前からあったわよ。なんでも無名の芸術家やらが建てて数年前まで生活してたらしいけど…今は死んじゃって誰も住んでいないって噂。まぁ、こっちあまり来ないし、この店も久々だし…」
なかなか気付かないかもね…とジュースをストローで吸い上げる同僚。
「……。」
気付かない、だろうか…
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。」
笑みで返し、再びパスタを頬張る。
-…見たことないはずなのに、なぜか胸がざわつく。
-…違和感が拭えない。
これは…
「調べてみるか。」
ぽそりと言った言葉に、目の前の同僚が首を傾げていたとは言うまでも無い。
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