夢で会えたら8
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目を瞑ると今まで何が見えたか考えた事などなかった
夢など見ても忘れるか意味のないものだった
自然と脳裏に映る氷河の国の光景
女達の話し声
己を追放するババァの言葉
真っ黒な闇の中
映し出されるのは己の内に棲みついた悪夢だった
それも沢山の仲間と出会い別れるうちに夢は鮮やかに色を変えた
映し出される顔触れはこちらを見て笑い怒る
時に肩を抱き、腹を抱え笑い合う
歯がゆくも決して悪くなかったー…
そしてー…
いつでも悪夢でも愉快な夢でも、脳裏の端に映し出されるのはー…
「起きたか…」
暗闇から光を捕らえる。
赤髪の見目の整った男はこちらを見て呟いた。
「……。」
そう言えば、武威に黒龍派を打って寝ていたんだったな…
今だハッキリしない頭で状況を思い出す。
ー…魔界暗黒武術会の決勝戦
「…俺は何時間寝てた?」
「6時間ほど。」
赤毛の狐は岩に凭れ本を開ける。
ー…ある意味、どこまでも時間を無駄にしない奴だな。
「大会は?桑原と幽助は?」
呑気に本など読んでる場合ではないだろうに。
「まだ戦ってませんよ。」
「何?どういう事だ?」
意味が分からず眉が寄る。
狐が困った様に本から顔を上げ周りを見回せば己も自然に狐の視線の先を追った。
「貴方の後始末に手間取っていたんですよ。」
「……。」
なるほど。
そういえば俺がリングを壊したんだったな。
司会の女達が試合の再開を放送する。
どうやら前の闘技場から石盤を戸愚呂が運んで来たらしい。
…今からか。
「…ずいぶん気持ち良さそうに眠ってましたね、飛影。」
こちらを見て苦笑する狐。
いやに穏やかな寝顔だったからビックリしました。と笑う。
「……。」
「良い夢だったんですか?」
「それなりにな。」
ふんっと鼻で笑う。
ー…ずいぶんと都合の良い夢だ。
あいつがあの時と変わらない笑みを浮かべ両手を広げる。
それでもそれ一つで悪夢など吹き飛ぶから笑える。
あれから数年たった。
二年か三年か…
すぐにまた己の元に現れると思っていたのに、時は刻々と過ぎて行った。
ー…氷河の国は見つけた。
だが、当初の様な憎悪は湧かなかった…
否、感情が動かなかった。
見つけたかったのは氷河の国か。
それとも別の何かを探していたのか。
目の前で桑原の体が固まる。
桑原が幻海の死を知ったのだ。
自分だけ知らなかった彼女の死。
人形劇で教えてやると、下衆な男は自身の手の形を変えていた。
ー…昔々、若い男と女がいました。ふたりは共に武道を極めんとする仲間でした。しかし…年月がどんどん過ぎて女は醜くく年を取りー…
楽しそうに桑原に解説し出す戸愚呂兄。
ー…吐き気がするぜ。
「死」 を連想する
あいつが来なくなったのはどうしてか。
無事かどうかも確認出来ないもどかしさ。
そして何よりも身近で見てきた「死」というもの。
簡単に迎える死。
人間ならば尚更だ。
引っ掛けば摘める命。
険しくなっていく飛影の横顔を狐は無言で見ていた。
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