夢で会えたら7
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「ごめんなさい、ごめんなさい。」
手足が動く様になった愛音がせきを切った様に飛影に抱きつく。
「…なぜ、謝る。」
怪訝そうに眉を寄せる飛影。
それでも何度も謝る愛音。
「傷付けてごめん、弱くて…弱くて、ごめんなさいっっ…ごめん、飛影…」
泣きながら謝る彼女の背を撫でる飛影。
弱い弱い人間
脆い女
「飛影ぇ…」
ヒックヒックと泣く女に飛影は意味が分からなかった
弱いから?
何を言っている。
お前がなぜ俺に謝罪をする
男に乱暴され怖い思いをしたお前が俺を責める事があっても謝罪をする意味がわからない
「傷付けて…ごめ、んなさい…」
「…お前が傷ついたん、だろう?やめろ、意味が分からん。」
本当に分からない
理解できない
不可解すぎる
守ると言ったのは己なのに…
戸惑う
ギュウギュウと抱きしめる彼女の体はずっと震えていた。
それを止めたくて抱きしめ返したんだ。
お前はなぜ自分を責める
なぜ俺の心配をするんだ?
眠ってた感情がじくじくと胸を焦がす
自覚したくない熱が急速に身に巣食う
優しく抱きしめ返してきた飛影に大きくなったんだなと、混乱しながらも思った。
固く逞しい胸に腕に体温。
大丈夫だと微かに呟く低い声に安心する。
強くなるから
もうあんな顔させないから
弱くてごめんなさい
不意に彼の力が抜ければすぐそばで顔を覗き込まれる
「ぐちゃぐちゃだぞ。さらに不細工になる。」
フンっと鼻で笑う彼に、思わず口元が歪む。
「わ、わかってるよ…ひっく…」
「……。」
赤い瞳がじっとこちらを見据える。
「飛影?」
「少し黙れ。」
赤い瞳が細くなる。
長いまつげが伏せられた。
視界が…
彼で埋まるー…
「………。」←愛音。
「…おい。なんだこの手は。」
至近距離の少年の口元に重ねられた彼女の両手。あたかも不機嫌そうな飛影の低い声。
「…え?あ、な、なに!?」
真剣な愛音の表情が一変。気付いた様に両手を上げ固まる。
「貴様…」
赤い瞳が不服そうに据わる。
「いや、なんか変な感じがしたから…うん、いや、何もない。」
気のせいだ気のせい。とウンウン頷く彼女にもう一度仕掛けてやろうかと思う飛影だったが、心なしか頬を微かに染める彼女に優越感を感じれば今回は納得してみる。
しかしだー…
微かに飛影の口角が悪戯に上がる。
未だひとりボソボソと呟く愛音の上に出来る影。
見上げれば影が落ちる。
彼女の額に触れた温かく柔らかな感触。
「へ?」
「帰るぞ、愛音。」
してやったりの笑みを浮かべる少年。
ぽかんと口を開けたまま見上げる彼女。
(こ、これはー…!!)
そして徐々に現状把握していく。
額に口づけされたのだと。
「ツ…ツンデレが、いきなりこんなにレベルUPするなんて…!!」
あわわわわと赤くなりながら俯き頭を抱える彼女に不可解そうな瞳を向ける飛影だったが…
気付く。
彼女を囲う異質な気配。
否、よく知り得た「時が来た」気配だ。
すぐ手を伸ばす飛影の前で、それに気付いた様に顔を上げた愛音。
青い光が彼女の体を包む。
瞬間ー…
少年の名を呼び掛けた彼女の姿は跡形もなく消え去る。
はらりと落ちる黒いマント。
「……。」
それを静かに拾い上げる少年の眉は怪訝そうに寄っている。
いきなり消えるあの体質はどうにかならないのか、と内心呆れも含みながら息をつく。
そして赤い瞳を細めれは踵を返すのだった。
またすぐに来るだろう、そういつもの様に思いながら。
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