夢で会えたら7
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ー…以前から俺を付け狙う輩がいた
元は自分が蒔いた種
血に狂っていた時期はどんなに妖怪を葬っても満足などしなかった
そんな時に耳に入ったある盗賊団
訳ありの大所帯の盗賊一味
盗賊団はそれまでにも数えきれないほど葬ったが、そこの盗賊団は他とは少し違っていた
奪うのは珍しい妖怪
金目の物ではなく妖怪を捕らえる賊は売買の目的以外ない
ー…売り先は決まっている。
人間界だ。
妖怪の誇りを忘れ人間の飼い犬となっている妖怪。
別に勝手にすればいいと思うものの何か引っかかった。
それは何か分からない、だがー…
直感が何かを伝えてくる
珍しくそれに関しては残虐な性を持ち余す衝動だけで狩りに行ったわけではなかった
厄介な敵もいた
なかなか会えない強敵も何匹かいた
それでも狩りに行ったのは意味の分からない直感のせいだ
結局、頭不在の為全滅には至らなかったが、団員の居なくなった賊がやっていけるほど魔界は甘くはない
地下室に閉じ込められていた珍妖怪共を解放すれば、奴らには感謝さえされた
助けにきたわけではないが、結果そういうこどだ。
そしてー…
俺はそれ以降、その盗賊団の頭の男に命を狙われる事となった
中々の強者
引き分けも多々、だがそれでも己の方が強かった
久々に見つけた良い暇つぶしにとどめを刺す事はしなかった
相手は常に本気だったから尚更楽しかったのだ
日々強くなっていくそいつが
良い好敵手となってくれることをどこかで楽しみにしていた
だから油断していた
その結果がー…これだ。
愛音の肌けた体に己の上着を掛け、口に詰められた布を取る飛影。
「ひ、えぃ…」
涙でぐちゃぐちゃになった彼女の顔。か細い声が目の前の無表情の男の名を呼ぶ。
「少し待ってろ。」
彼女を見て一瞬揺れた赤い瞳。
表情はなくとも男の赤い瞳には冷たく触れれば切れてしまいそうな剣呑さを含んでいた。
そして、彼の妖気は荒々しさも激しさもないとても静かなものだった。
ゆるりと飛影の影が揺れ消える。
次の瞬間ー…
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」
壁に叩きつけらた先ほどの男は地面で腕を抑えながら苦しそうにもがいている。
その前で静かに男を見下ろす少年。
右手に握られた剣から滴る赤い血。
地面に転がる片腕。それは先ほどまでもがき苦しむ男に確かについていたものだった。
「次は右だ、安心しろ。最後は首をはねてやる。」
冷淡な冷ややかな声が洞窟に響く。
飛影が敵を嬲るのは珍しい事ではない。
だがー…
「うぎゃぁぁぁあ!!!」
「あぁ、すまん。これは足だったな…」
クツクツと嘲笑う低い声が響く。
(…飛影…)
何かが違う。
愛音の胸が騒ぐ。
男を痛めつけているはずの少年から発せられるオーラは酷く冷淡で静かなものの、どこか激しい怒りさえ感じるのだ。
同時に痛々しい悲しみまでも。
愛音は彼の背に震える手を伸ばす。
再び頬を伝う涙。
意味の分からない感情。
(ごめんなさい…ごめんなさい、飛影。)
先ほど自分を見た赤い瞳が彼女の頭から離れなかった。
一瞬揺れた赤い瞳は酷く傷付いていた。それは愛音自身がショックを受ける程。
先ほどの襲われた恐怖など吹き飛ぶ位の衝撃を彼女自身受けていたのだ。
「さっきの蛙の様に一思いにはやらん。精々痛がれ。」
少年の赤い瞳は更に細まり、形の良い口角は皮肉な弧を描く。
「お、おまえ…なんでー…そんなに…」
男からすれば今までここまでの仕打ちを飛影から受けた事などなかった。
それに飛影の妖気は以前より格段に下がったはずなのだ。
なのに、なぜ自分はこうなっているのか。
否、今感じるのは確かに赤子同然の妖気。
なのに…
一瞬だが確かに先ほどー…
「やはり、お前のおんな…か、ははっ…」
それに少年の眉が不快そうに寄せられる。
「どうせ、殺されるなら…さっさと犯しとけばよかった、ぜ。」
力なく笑う男に飛影の表情から感情が消える。
飛影はその直後、あっさり男の首をはねた。
血溜りの池に立つ少年
ゆっくりと彼女の方へ振り返る
端正な顔と服に掛かる大量の返り血
静かな怒りを宿したまま振り返った先にある自分に向けて伸ばされた白い女の手
それに目を一瞬見開くも眉を寄せる少年
彼女の側に寄れば彼の血塗れの手が彼女の手を掴む。
「すまん。」
激しく揺れる赤い瞳。
今にも泣きそうな彼の瞳。
彼の懐から小瓶が出てくれば、それの蓋を開け中の液体を彼女の口に流し込んだ。
「もうすぐ体も動く。」
さらりと彼女の額に掛かる髪を流す少年の指。
微かに震える指先が彼女に伝わって行く。
飛影は酷く後悔していた
自分のせいで攫われた愛音
乱暴された彼女を見つけた瞬間手足が凍った
肌けた衣服
体に付けられた打撲跡に傷に血ー…
それから飛影の記憶は曖昧だった
ただ、すぐ殺してはもったいない
これ以上ないという程の絶望と恐怖を植え付け殺してやろう
だが最後はなぜか早まってしまった
伸ばされた白い手が目に入れば我にかえったのだ。
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