夢で会えたら7
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生温かい湿度を含んだ空気が肌に絡みつくー…
そして、生臭い。
愛音が覚醒しきれていない虚ろな意識の中、まず感じた事はそれだった
肌で感じる魔界特有の生ぬるい空気
以前、腐った血肉が混ざったそれが魔界の臭いだと飛影が言っていた。
それでも、生臭いなどと思った事も空気が気持ち悪いと思った事など今までなかった。
もちろん彼の戦いの最中に身を置けば嫌でも血臭は嗅がされたが。
それでも「今」とは明らかに違っていた。
視界が暗闇から少しずつ光を取り戻して行く。
聴覚も嗅覚も意識がはっきりしていくのと共に鮮明になっていく。
彼女は地面にうつ伏せに寝ていた。
そして現状を把握しようと頭を上げようと努めれば、異変に気付く。
重い体、起き上がろうとも体に力が入らない。
微かに上げた頭を再び地面に戻す。
(ー…なに、これ?)
痺れているのか全く力が入らない。
微かに動くものの本当に微々たるものだ。
生暖かい地面、薄暗いこの場所は洞窟の様な場所の様だ。
(ー…私、誘拐されたのかな?あの蛙に。)
蛙に誘拐されるなど元の世界ではあり得ない。
だがここは魔界。
あの時の様子を思い出せばやはりそうなのだろうと理解する。
この体の異変もあの蛙の仕業なのだろうか。
今まで誰かに傷付けられる事もなく魔界で生きていけたのは飛影がいつも側にいてくれたからなのだ。
一人ならば蛙ごときにこのザマなのだから。
…さて、どうしたものか。
何の為に誘拐され殺されず、こんな状態で放置されているのだろうか。
考えても答えなど出るわけもないが、だからといって体も動かない。
(もしかして…)
一気にさぁと血の気が引く。
ー…人間は妖怪の餌になり得る。
そう閃けば思考は一気に傾く。
(殺さず生かしてる時点でまさか食い殺し!??)
新鮮に頂こうとしているならあり得る。
残忍な性格を持つ妖怪も少なくはないのだ。
やばい、と内心焦り出した時だった。
コツコツと地面に響く足音。
さぁと青ざめて行く愛音。
それはだんだんと彼女に近付き、頭の側に来れば止まる。
「あぁん?なんだ?まだ動けねぇのか?てか、起きたのか?ん?」
ガシッと雑に髪を掴まれ強引にそのまま引き上げられれば、引っ張られる痛みと喉が仰け反る息苦しさに顔を歪める彼女。
そして、そんな彼女の顔をしゃがみ込みながら覗き込む妖怪の男。
真っ赤な赤い髪は肩くらいで一つに束ねられ、額に一本の角を生やしている。
切れ長の金の瞳にとんがった耳。
一見整った容姿の男。
「人間てのは効きすぎるからいけねぇなぁ、下手したら呼吸まで止まっちまうところだったな、まぁ死んだら死んだで構わねぇが。」
ははっと馬鹿にした様に笑う。
それに彼女は忌々しそうに負けじと男を睨んだ。
それに感心した様に男の瞳が細くなる。
「へぇ、気が強そうだねぇ~。嫌いじゃないが俺が優しい奴じゃなきゃお前死んでるぜ?」
グイグイ彼女の髪を引っ張り笑う男。痛みでさらに彼女の顔が歪む。
「まぁ俺もそう気は長くないからな。あいつが早く来なけりゃお前はこのまま嬲り殺しなわけだ。わかるか?お前は餌だ。」
「!??」
「しかし年を取らねぇってのはなんでだ?」
あぁ?と顔を寄せられる。
「あいつって…だ、れ?」
まさかと思った。
苦しげに彼女は口を開く。
「あぁ?そんなの、あのチビに決まってるだろう?」
「どう、して?」
(飛影…。)
「あれが俺様を怒らせたからだ。罰を与えてやろうと思ってな。ただそれだけだぜ?」
「……。」
飛影の過去は漫画の中のことだけしか知らないのだ。
全て描かれてないから知らないことも今まででも一杯あった。
だから愛音がこの妖怪の男を知らないのは当たり前なのだ。
「お前はあいつのせいで今から嬲り殺されるんだぜ?」
冷ややかな笑みが男の顔に宿る。
金の瞳の奥に映る妖艶な冷めた色。そしてこちらを見て舌舐めずりをするそれに彼女の本能が危険だと警告を告げる。
「女の嬲り殺し方はだいたい決まってるがな…」
髪が引きちぎられそうな位引っ張られ、脇腹を足で蹴られれば体制が仰向けへと変わる彼女。
「!!?」
頭で警音が鳴る。
髪は解放されるも、次に待っていたのは悪夢の何ものでもない。
馬乗りになる男に背筋が凍る。
引き千切られるブラウスに晒される肌。
嫌だと叫べば口に詰められるのは、敗れた衣服。それも強引に。
「へぇ、良い体してるじゃねぇか。」
まじまじと見下ろす男。微かに息の上がる男に抵抗したくとも体がいうことを聞かない。
肌を撫でるのは乱暴な無骨な男の手。
鳥肌が立つ。
涙が溢れる。
(嫌だ、嫌だ!!)
「優しくちゃ意味ねぇからな、酷く犯して嬲って殺してやるよ。早くチビが来ればいいな。」
ははっと笑う男。
鷲掴みにされる胸、這わされる舌。時折痛い位に肌に噛みつかれる。
「いいなぁ、お前の泣き顔。癖になったらチビを殺した後で死ぬまで飼ってやろうか?年をとらねぇ理由も聞いてやるよ。」
そんなの聞いて欲しくもなければ、飼われる位なら舌を噛んで死んでやる。と腸が煮え返るもののそれを伝える術もない。
「まぁ、俺に嬲り犯されて生きていたら、だけどな。」
はっと鼻で笑えばガリっと再び肌を噛まれ、声に鳴らない声が上がる。
「血も普通の人間と変わらねぇしなぁ、何がちがうんだか。」
噛み付いた脇腹を舐めながら男は面白くなさそうに言う。
「匂いもただの人間だしな。まぁいい。せっかくだし楽しませてもらうぜ、ぐちゃぐちゃに壊してやるよ。」
下卑た笑みを浮かべさらに好き放題触る男。
嫌だ嫌だ嫌だ
気持ち悪い
誰か助けて
愛音が自由の効かない体でそれでも必死に助けを求めた時だった。
男の動きが止まる
それに違和感を感じた彼女は恐怖に眉を寄せたまま背けていた顔を戻した。
瞬間ー…
目の前にあった男の姿が一瞬で消えた。
そして直後ズガンッと激しい音と共に地面が揺れ、天井からパラパラと洞窟の破片が落ちてきた。
なにが起こったのか…。
某然とする愛音。
妖気も霊気も感じることができない彼女だがー…
それでもどこかで分かっていた。
(ひ、えい…)
瞳から更に涙が溢れる。
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