夢で会えたら6
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空気を切り裂き
男の額を掠める少年の持つ剣先
同時に少年の首元を掠めるのは男の特異な形をした武器
互いに一瞬
しかしそれは互いに長い
互いに武器を引けば
距離を取り離れる
そして訪れる静寂
「…なるほど。」
男は口元に笑みを浮かべ、少年を見据える。
「お主の上達ぶりは素晴らしい。これならば簡単に死ぬこともなかろう。」
静かに武器を降ろす男。
それに赤い瞳を細める少年。
彼はまだ剣を構えたままだった。
「なんだ?まだやるのか?早くワシの元から去りたいのではないのか?お前は。」
「あいつは連れて行く。」
それに時雨はほぅ…と目を見開く。
「まぁ、今のお主なら心配なかろう。勝手にすればいい。あれも酷くお主の側に居たい様だからな。手術の日も待合室で待つ所か手術室の扉の前にいた位だ。お主の痛みの声をひとつも聞き逃すことなく耳にしていた。たいした女子だ。」
「……。」
剣を降ろし、時雨に背を向ける飛影。
「…行き先は、氷河の国か?」
「あぁ、そうだ。」
「復讐は悲しみしか生まんぞ?今のお主なら別のものも見えるだろう?それでも自ら闇に足を向けるのか?」
「……。」
「今のお主なら選べる。お主の内にあるものは闇だけではない。」
「貴様は俺の親父か?」
ハンっと顔を歪ませ吐き捨てる飛影に、ふっと顔を綻ばせる時雨。
「愛音がワシの前でお主に過保護に映ったのかもしれんな。変な感覚だ、巣立つ雛の子を見ている様な。いやなに、お主の人生だ、好きにすればいい。それが本音、だが…」
「……。」
「愛音は復讐を成し遂げた血まみれのお主でも受け入れそうだと思ってな。」
「……。」
ー…血まみれ。
どくりと自身の心臓が脈打つ。
想像出来る。
両手を氷女の血で濡らした自分。
それを泣きそうな顔でこちらを見て微笑む彼女の顔。
それは己の為に微笑むのだろう
その為に生きてきた己の目的を生き様を彼女は否定しないだろう
「男には成さねばならぬ事は必ずある。だが我々は所詮数ある万物の一つの生き物にすぎん。何を復讐の代償とする。それは復讐より小さきものか己に問うがいい。」
「……。」
「冷えて来たな。まぁ、今夜位は泊まって行け。出発は明日でもよかろう。」
やれやれしゃべりすぎた。
と息を付きながら帰路に足を踏み出す時雨。
が、すぐさま時雨の雰囲気が一変する
「どうしー…」
「愛音の気配がない。」
「!!!」
「お主の妖力ではまだ測れまい。屋敷に気配がない、あるのはひとつの妖気の残り香のみだ。」
意識を飛ばすことでわかった時雨。
すぐさま駆け出そうとすれば隣で風が駆け抜ける。
「…飛影…。」
時雨の視界に一瞬映ったか映らなかったか定かではない彼の姿に、時雨は「そんなに早かったんだな、お主は。」と苦笑するのだった。
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