夢で会えたら6
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それは時雨も交えた夕食時の事。
不意に愛音の視界に入ったのは、机を挟んだ目の前に座る箸を持つ飛影の手。
「…ねぇ、飛影…なんか手が…」
じっと手を見つめる愛音。
「??」
それに己の手がどうかしたのかと箸を止める飛影だったが
「やっぱり、ちょっと手大きくなったよね。てか、ゴツゴツしてきてない?」
そういえば何気に背伸びてる様な…。と思いながらも、彼の顔をまじまじ見る彼女。
今になり改めて気付く。
自分の事が手一杯で彼をしっかり見る機会もなかったのか…
(私、第二の母失格だわ…)
「……さぁな。」
そんなことか、ジロジロ見るな。と飛影はそのまま食事を再開する。
「ふむ、わしの見た感じだとお主はもう15位ではないのか?」
それに、飛影の隣の席で笑みを浮かべながら言う時雨。
「え、そんなに!?そういえば、そんな感じに見えなくもない…体も細身だけど、子供にはない細マッチョ気味な気も…」
えぇ~とさも残念そうに箸を咥えながら言う愛音。
可愛い飛影がだんだんとでかくなっちゃうの?
と発言すれば、ふんっと鼻で笑う飛影。
「これからもっとでかくなるぜ?」
時雨も越すかもな。
と赤い瞳を細め鼻で笑う彼に
「ならないよ、ある一定が来たら止まるよ。まだ伸びるだろうけど、全然思ってるみたいには伸びないよ~だ。」
と言いたいが、決して言えない。
まだまだ未来は希望で満ち溢れている年頃。
どんなに先を知っていようが、言えない。
(あ、でも偏食も前よりはましになってるはずだし、原作通りの背丈とは限らないわ。)
「飛影、お魚もっと食べて。はい私のあげる。そして牛乳飲んで!!」
「やめろ、あわん。」
「合う合わないはこの際重要じゃないの、いかに必要な栄養素を取るかよ?」
「ならそっちの肉をよこせ。」
「え?肉??肉はだめ、私のだもん。」
「この魚もお前のだろうが。俺は魚より肉が好きだ。」
「だいたいの若者はそうよ!というか自分の分の肉、もう食べたじゃない。その魚食べたら、明日ハンバーグ作ってあげるから。ね?」
「……自分の分の魚ももう食べたぞ?」
これは二匹目だ、と魚を見下ろしながら眉を寄せる飛影。
「ハンバーグいらない?」
「……。」
「…オムライスの上にハンバーグ、ソースはデミグラスソース。」
「…ふん。」
がぶり。
魚にかぶり付く飛影を見て嬉しそうに笑う愛音。
それにどこが怪訝そうな表情を見せる少年だったが、彼の頬が染まるのは仕方が無い。
「まるで子をしつけている母のようだな、愛音。」
それに楽しそうに笑う時雨。
「餌付け以外の何ものでもないですけどね。」
「お前ら黙れ。」
今だ微かに照れたままの飛影。
魚を食べ終われば、牛乳を口に流し込む彼だったがー…
「まるでわしらが夫婦で飛影が息子のようだな。しかし、愛音、お主は本当に器量が良いな。どうだ?本当にわしと夫婦にならんか?」
瞬間ぶっと噴き出す飛影。
それに目を見開く愛音。
「わぁっ、飛影何してんの!?落ち着いて食べなさいよ。あぁ、汚い…。」
愛音がタオルを差し出すも飛影は手でそれを制する。
目の前の男を睨みつけながら口元を自身の腕で拭った。
「なんだ?何か言いたそうだな、我が息子よ。」
今だ楽しげに笑う時雨。
「一回死ぬか?」
「こらこら、喧嘩しない。というか器量が良いとか褒めらたの初めてです。それ、今日から私の売りにします!!」
へらっと笑う愛音に、さらにはははっと笑う時雨。
「あぁ、いつでも貰ってやる。嘘じゃないぞ、ワシはお主を気に入っているからな、こやつがいなければ本気で口説いている。」
「えぇ~ありがとうございます。じゃぁ、売れ残りそうだったらよろしくお願いします。…聞いた?飛影、時雨さんいざとなったらもらってくれるってぇ、安心だね。行き遅れなくて済むわ。ははっ。」
本人は時雨の軽口で冗談だと思っているようだ。が、時雨が彼女を少なからず気に入っている事を知っている飛影は、二人の会話が煩わしくて仕方がない。
「…お前なんか誰もいらん。」
「あ、ひど!!飛影みたいな冷血漢の方がよっぽどいらないわよ。」
ね~!!と時雨と顔を合わせ笑う愛音。
そして、時雨の余裕の笑みが飛影に向けられる。
それに不機嫌が顔に露わになる飛影。
「若いな、飛影。」
どこか勝ち誇った様に言う時雨にさらに眉間の皺が寄る少年。
「…時雨、食ったら再開だ。」
「あぁ、いいぞ。今のお主はいつもより強そうだ。」
少年の不機嫌さが手に取るように分かるからか、楽しげに笑う時雨。
それにさらにメラメラ燃え上がる少年の妖気。
部屋から出て行こうとする二人。そんな彼らの背に慌てて声を掛ける愛音。
「え、夜なのに!?今からするの!??」
(私の鍛錬は!??てか、ご飯…あ、全部なくなってる。)
「先に寝てろ。」
低い少年の声色。
「えぇ~!??」
(私の番なのに!!)
どうにかして飛影を寝させる方向に持って行こうと思考を巡らす彼女だったが
「…あと、お前が強くなる必要はない。」
「!!?」
振り向かず言う飛影。
なぜ知っているのかと目を見開く彼女に、ほぉと瞳を細める時雨。
「俺が強くなるから安心して守られろ。」
「……。」
「ちっ、行くぞ。時雨。」
スタスタと去っていく飛影。
その後を楽しげに笑みを浮かべ付いていく時雨。
残された愛音は、その場にぺたんと座り込む。
そしてー…
(なにあれなにあれなにあれ~!!!!きゃぁ~!!)
なぜ彼が自分の鍛錬の事を知っているのかは分からないが、普段見ることはないデレの飛影
しかも甘い
「いやぁ~ませてきたわねぇ~」
複雑な気持ちだがどこか嬉しい。
子供子供と思っていたがしっかり男の子として成長してくれているではないか。
「あぁ、ツンデレの息子を持つ母の気持ちがわかるわ、可愛い!!可愛いぞ、飛影~!!きゃぁ~!!」
両頬に手を当て悶え、床に転がる愛音。
その時だった
「ケロ」
(??)
「お前よくわからん。居たり居なかったり。…だけど、やっぱり普通の人間ケロ。」
床に転がった先に見える冷蔵庫の下からこちらをじっと見据える蛙。
「??…え?(今、しゃべったの、この蛙?)」
親指サイズの小さな緑の蛙。
額に小さな角はあるが、他は人間界の雨蛙と見目は同じだ。
「お前には悪いが、ずいぶんと我が主がお待ちだ。来てもらうケロ。」
「へ?」
意味が分からずぼんやりしていた彼女だったがー…
「!!か、蛙がしゃべっー…」
我にかえりバッと身を起こした瞬間。
真っ黒な闇が自身を包み込む。
身体に纏わりつく様な空気。それを感じた瞬間、その場から彼女の姿は消えるのだった。
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