Another world 4
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「空、誕生日おめでとう!」
私は新しい生を迎え今日で5歳になった。
目の前のテーブルに置かれたケーキに刺さる五本のローソクの火をふう!と身を乗り出して吹き消す。
拍手にお祝いの言葉。
両親と友人に囲まれての誕生日会。
まぁ、友人と言っても近所の子供達だが。
「おめでとう!はいプレゼント!!」
「ありがとう!!開けていい?」
ピンクの小包をくれた女の子はめぐちゃん。団子頭の可愛い女の子。
小包を開ければ、あらかわいい、小さなベアのぬいぐるみ。これは嬉しい。
次はしょうご君。少々ガキ大将気質な彼はさて何をくれるのか……ビニール袋を渡され中を覗けば…
石?
あぁ、そんなキラキラした目でこちらを見て…なになに、河原に落ちていた綺麗な石をたくさん拾ってきた??
……ママには言ったのか?ママには。今日は友達のバースデーパーティーだと!!
いや、いやいや構わない、良しとしよう!!いくら今日私のバースデーパーティーが家であるとは言え、ご馳走を母が作り、父がケーキを買ってくれたとはいえ客はまだまだお子様だ。
気持ちが嬉しいのだ、ほら。この石を一生懸命探す彼の姿が思い浮かぶじゃないか。私が喜ぶと思って泥んこになりながら探す可愛いこの少年の姿が…。
そして、最後はー…
こほん。
思わず一息ついてしまうのはこの際仕方がない。
満面の笑みを浮かべ、おめでとう!と両手で小包みを渡す、お狐様…否、幼馴染様。
さぁ、一体彼は何をくれるのだろうか…
恐る恐る小包を開けて行けば…
あら、あらあらあらあら…
「…かわいい。」
え、これおもちゃ?じゃないよね。
可愛い赤いお花が付いた髪留め。
思わず声が出ちゃった。
「君に似合うかと思って、作ってみた。」
「へぇ、つく…えっ!?つくったの!??」
売り物かと思ったじゃないか!!
「うん、でもあとでまた渡したいものあるから家に来てね。」
それに頷く私。
そして皆にちゃんとありがとうと再びお礼を述べた。
ベアのぬいぐるみはベットの枕元に置こう。髪留めは明日から母に頼んで髪の毛を結う時にでも使って貰おう。
石は…うん、宝物箱にでも大切に大切に保管して置こう、そうしよう。
ーーー
ーーーー
「はい、空これあげる。」
その後、秀一の家に行き部屋に通されれば渡された紙袋。
「母さんが、空へのプレゼント代としておこずかいくれたんだけど、その前に髪留め作ってしまってたから。これはそれで買ったやつ。」
「そんなのいいのに。…でも、ありがとう。せっかくだしもらっとく。」
というか何故家で渡さない。
そう思い紙袋からそれを取り出せば、理解する。
『ストレス社会とその心理』
という表紙に、見るからに字がぎっしりと詰まった分厚い本。
「……。」
「この前本屋でその本見てたから欲しかったのかなって。さすがに漢字も知らないはずの君にこんな本、皆の前で渡せないよ。」
「確かに。」
なるほど。
確かに両親はびっくりするわ。
「だけど、なんの魅力も感じない内容だったよ?読むの時間かかるだろうしよかったら掻い摘んで説明しようか?」
「…。読んだんだ。」
「うん、本屋で立ち読みしてた。安心して、それは新品だから。」
「…すごく変な目で見られたんじゃない??」
小学生がこんな系統の本読む姿なんてそう見ないわよね。
「そんなことないよ。最近の子供は英才教育も多いし皆気にしない。」
「えぇ~…違うでしょ、それ。」
苦笑する私に、楽しそうにくすくすと笑う彼。
「本当に君って…大人なんだね。日に日にリアルで笑えるよ。」
「貴方には負けますよ。大じぃさまや。」
「……。妖怪は普通だよ、人間と同じ様に考えるなって言っただろ?」
じろりと翡翠がこちらを睨む。
見た目は可愛く幼い少年だが、長年生きた妖狐だ。睨まれればやはり……
「怖い顔…。」
「……。」
「あ、稲荷寿司食べる?」
彼の眉が寄ったので、ポケットからサランラップに巻かれた先ほどのご飯の稲荷寿司を出してみた。
あ、さらにすっごーく忌ま忌ましそうに睨んでくる。
本当に漫画と違って紳士なイメージ崩れるなぁ。腹黒なのは何と無く分かっていたけど…
それでも最初よりは少しだけ柔らかくなった気はする。
言葉遣いとか…。
はぁ、と息をつけば「何考えてため息着いたの?死にたいの??」と彼は綺麗な口元で弧を描いた。
決して目は笑わずに…。
柔らかくなったけどトゲは相変わらずだわ。
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