Another world 8
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「空!!」
「……。秀一、君?」
彼女の視界に入るのは、赤い髪の美少年。
どこか今にも泣き出しそうな顔で笑っている。
その後ろには白い天井。
(ここは…)
「秀一君の、部屋?」
「あぁ、よかった。空。死ぬかと思った、本当に。」
「……あっ、腕…っいっ!!?」
起き上がろうとすれば右腕に激痛。
秀一は焦った様子で彼女をベットに戻す。
「だめだ。半ば強引に繋げたからしばらくは安静にして。」
「えっと…繋げた、って腕を?秀一君が??」
(そうだった、確か八つ手に腕を食いちぎられて…うわっ、やだ、思い出すだけで吐きそう。)
「出血多量で即時にこうするしかなかった。病院に連れて行ってる時間なんてなかったし、俺の能力使ってる方が早かったから。」
「……ありがとう。秀一君、お医者さんになれるね。」
ひどく申し訳なさそうに翡翠の瞳が揺れながら空を見る。
「……、ただ、八つ手に…やられた場所は人工皮膚で繋げさせてもらったから、跡は…残る。」
「あー…いいよ。いいいい。命あってなんぼだし!!助けてくれただけで感謝です!」
そう言えば、彼の瞳がじっとこちらを見据えた。
不安気に揺れる瞳の中に宿る凛とした何かに空は思わず息を飲む。
(お、怒られる!?)
起こる出来事を知っていながらの自身の醜態に叱られる事を一瞬覚悟した空だったがー…
「…ごめん。…俺の妖力が完全に戻ったら君の腕を傷跡一つ残らないように治すから。だから、少し待ってて。」
「…え、あ、ありがとう。」
(あれ?怒られない??)
「…何、その顔。…怒れないよ、俺のせいで君は攫われたんだ。」
「…いや、私の不注意なだけー…」
「君は死にかけた。」
「!??」
発せられた声は酷く低く、苦しそうに眉を寄せこちらを見る表情に息を飲む。
(…すごく、心配してくれてる。)
「あの時、近くにいたのは知っている。知ってて、放置していたのは俺だ。」
稀に見ない彼の表情。
母親の時以来だ。
母親の時はまだ戸惑っていた感情を、今では他人の自分にこんなにも出してくれているのだ。
本当に、珍しいというか、初めてだが。
空は思わず笑う。
「何、笑ってる。」
「いや、嬉しいなと思って。私にまでそんな風に気にかけてくれるなんて。ふふふ。」
「……。」
「だから、ありがとう。私、良い友達を持ったよ。」
「…友達、か。」
「あれ?違うの?まさか、女として見たりしてる?」
「いや、こんな子供、女として見たことはないけど。友達はしっくりこないな。」
相変わらず何気に酷い。
しかも友達認定までしてもらえないとは。
「…私にとっては幼馴染で貴重な友人だよ、君は。」
「…貴重ね。」
クスリと笑う彼に、若干ほっとする。
重い雰囲気はあまり得意ではないのだ。
「でもまぁ、原作通りだね。喜多嶋さんもいたし。」
「あ…」
「え!??」
「…いや。」
若干眉を寄せ何やら考える彼にもしやと思う。
「つ、連れて帰ってきたよね!?」
「当たり前だ。飛影に頼んだ。」
「な、なら……」
「君は気にするな。こっちの話だから。」
記憶の消去のことだろう。
「…いいんじゃない?このままでも。」
恋位良いのではないだろうか。
「……。たまに腹がたつよ。」
なんでも知ってるあたりが。
と目を細め呆れるように言う秀一。
「だって勿体無いよ、色んな…気持ちを消しちゃうの。」
「必要ないものだ。」
「必要かどうかは彼女が決めるんじゃないかな?妖怪を見た恐怖を消してあげるのは良くても、さ。秀一君への気持ちまでー…」
「必要ない。」
「……。」
頑なだなと空は思う。
だがー…
「俺は妖怪だから。」
どこか少し切なげに瞳を揺らす彼に彼女もそれ以上何も言えなかったのだった。
(あ!そういえばママ絶対心配してる!!この様子だと、ママへの配慮絶対忘れてるわ!!)
もう一つの重大な事を思い出し、彼女は慌てて目の前の少年に告げるのだった。
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