- Everlasting scar - 永遠の傷跡
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- Everlasting scar ⅩⅠ -
熱い湿ったものが肩をざらりと這ったー…
肩から背中に掛けての傷口をそれは優しくも丹念に這う
まるで愛おしむ様に
まるで祈る様に
背筋を撫でる手の感触
肌の感触を楽しむかの様にそれは滑って行くー…
甘く痺れる感覚
熱が這う傷跡
「はっ!!!」
がばりと効果音が付きそうな程勢い良くベットから跳ね起きる彼女。
周りを見渡せば、あれ??と首を傾げる。
自分の部屋。
寝かされたベット。
(あれ、昨夜、私は秀ちゃんと…)
そして何かいつもと違う違和感に気付く。
見回すもどこも変わらない自室。
鏡を見て自身を見る。
(あれ…分かった、体が軽い??)
なんとなく、着ているパジャマに手を掛け肩を出す。
そして気付く。
「!!…傷が-…薄くなってる??」
(これって-…)
扉がノックされる。
そして入ってくる人物を某然と見た。
「あ、起きてたんだ。おはよう。会社には連絡しといたから。」
手に持つお盆に乗った朝食と思われる食べ物。
(……。)
「昨日は気絶するし参ったよ。」
笑みを浮かべテーブルに朝食を並べて行く彼をぽかんと見つめる彼女。
(やばい…つっこみ所が多すぎて何から言えばいいのか。というか、ママも幼なじみだからって、勝手に上げすぎでしょ!!!)
しかしだ-…
「って、会社に電話!?秀ちゃんが!??だめだめ、休んでなんかいられない!!まだまだ頼まれた仕事がー…」
「大丈夫、昨夜俺がやっといたよ?メモ書きしてたやつだろ?途中までやってあったからやり方もわかったし。」
「…嘘。」
「本当だよ。第一、今日はそんな体で行かせられない。まだ辛いでしょう??」
…辛く、ないわけではない。
だが、筋肉痛程度だ。
どちらかと言えば楽になった箇所もあるー…
そういえばー…
「パジャマ…」
「??」
「見たの?裸。」
「うん、脱がした。だって水着のままじゃ嫌だろう?」
「っ!!!」
「大丈夫だよ、ちょっとクラッとしたけど、我慢したしー…」
「あ、当たり前でしょ!!やばい、恥ずかし過ぎてまじ一人になりたい。」
そして思い出す。
あの熱の這う感覚ー…
「他は、何もしてない、よね?」
口元を引きつりさせながら言えば、瞳が妖しく細くなる。
「例えば??」
(た、たとえば!?何!?質問返し!?)
「た、例えば…勝手に、その、そのー…」
口ごもれば先を続ける事が出来ず真っ赤になりながら俯く彼女。
「俺の唾液は特殊なんだ。だから、妖気の通わない傷なら少しは消えるかと思って。」
「……。」
「ごめんね、あれで精一杯だった。」
「……。」
「栄子??」
放心状態の彼女の顔を覗きこめば、ハッと我に変わる彼女だったが、次の瞬間ぶわっと目元が歪む。
「わぁぁんっっ!!酷い酷い秀ちゃん!!!私、お嫁にいけないよぅ~、水着の下なんてなにも履いてないのに、見たんでしょう!!しかも、唾液って唾液って!!!!な、なめ、なめ-…もうダメだぁ~わああぁぁん!!」
あの感触は幻ではない!!!!
泣き崩れる彼女を某然と見つめる秀一。
しかし、すぐにその頬も緩みしゃがめば彼女の頭を優しく撫でる。
「大丈夫、俺がもらってあげる。」
「っ…!!」
「高校卒業したら働こうかな。大学いかないで。」
「…私の家庭教師の意味ない。」
「はは、元々あんまり意味ないよ。てか、俺が言いたいのそこじゃないんだけど…。栄子ー…」
そっと触れられる頬。
色香漂う瞳が間近で見下ろす-…
それに思わず口元が引きつる。
(というか今さらりと酷い事を言われたような…ううん、それよりも!!!)
「いい、言わなくていい。言わないで、お願い。これ以上追い詰めないでください。お願いします!!」
(秀ちゃんってこんなにごいごい来るタイプだったんだ!!)
それに、酷いなぁ…と笑う彼だったが明らかにたのしそうだ。
困る。
彼のペースでも全く嫌な気がしない、むしろ酷く心地よい。
これは、きっと…動転してるんだ。立て続けに色々あったから。
だけどー…
「はっ!!そういえば秀ちゃん学校は?」
「ああ、休んだよ。今日位昨日の余韻に浸ってたくて。」
にっこり笑う彼に、顔がかぁっと熱を持つ。
本当に参った。
彼に告白されてから異様に意識してしまっている。
どうしてこんなにも違うのか-…
自分もだが、彼の自分に対する対応はかなり開き直っている。
「幸せにするから。」
本当に困る-…
「……。いや、返事まだしてないけど。」
一方的に突っ走る幼なじみを突き放せないのはまんざらでもないから、だろうか。
嬉しいと思う自分は惚れやすいのかもしれない。
さらに真っ赤になる顔と心情を隠すように、栄子は彼を振り払うのだった。
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