- Everlasting scar - 永遠の傷跡
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- Everlasting scar Ⅸ -
ぎゃぁぁぁっ
悲鳴が聞こえた
同時に水から引き上げられれば肺に急激に入り込む酸素に咳き込む
肺が痛い
生理的な涙が出る
「本当に…馬鹿。」
引き上げてくれた彼は背中をさすりながら苦しげにそう呟くも、すぐ様視線を他にやれば忌ま忌ましそうに舌打ちをする。
それに彼の舌打ちなどレアだな、なんて思うも、彼はすぐに駆け出す。
朦朧とする視界に映る黒い物体に駆け出していく幼なじみ。
そしてあり得ないものが視界に映る。
軽やかに黒い物体の攻撃を交しながら手に持つ蔦で攻撃を仕掛けて行く。
「…正義の、見方?」
あぁ、私に隠してたんだな。と子供の様な思考に囚われる。
(内緒のヒーロー。正体は秘密、か。)
思考がこうも簡単に切り替わる自分に驚く。
未だ苦しげに呼吸を繰り返すも本当に図太い。
そして、そんな馬鹿な事を考えていれば出遅れた。
背後から蠢く物体に。
目の前で戦う異形の物体の一部に。
「きゃぁっ!!」
彼女の声が耳に入れば、宙吊りにされこちらに引っ張られるように宙を移動する彼女が目に入る。
彼女の体に巻きつく、真っ黒な触手。
それは目の前の妖怪の体の一部であった。
ー…これで、蔵馬、おまえはもうて出しできまい。
ソレはすぐ側で彼女を逆さにしたまま、その頬を長い舌でベロリと舐める。
それに一気に青ざめ悲鳴をあげる彼女。
ここまでくれば、気が強いのも困る。気絶してくれた方が幾分やりやすい…。
それにしてもー…
ー…あぁ、うまい。
これは絶品な餌だ。
味見などよくしてくれたものだ。
それはおまえが触れて良いものでは決してない。
メラメラと胸の奥が燻る。
ー…悔しいか?
おまえは手出しできまい。
来ればこの女、今すぐ食ってやるぞ??あと俺の攻撃を避けても、な。
そう言えば次は水着からしなやかに出ている太ももに舌を這わせる。
目を見開く秀一。
そして何かが静かにキレる。
「いややぁっ!!き、気持ち悪い!!」
彼女は鳥肌が立ちその場で暴れる。
ー…あぁ、いい。
一度犯してから食うとしよう。
煌々とした声に、背筋が凍る彼女。食べられる前にこんな得体の知らない物に犯されるなどたまったものではない。
「犯すだと?」
低いよく知る声色が響くー…
それに涙目になりながら視線を向ける栄子。
「三下がよく言う。それに触れていいのは俺だけだ。」
風で赤い髪が揺れればどこか銀色が混ざる。
同時にこちらを睨む翡翠に金が帯びているのは気のせいだろうか。
(…秀ちゃん?…だよね?)
ー…何を強気な、今この女はこの手にあるんだぞ?
そして、ソレが繰り出す攻撃をまともに受けて行く秀一。
ー…ふふふ、本当に避けないとは笑えるな。ふふふ。
血で染まって行く彼の体。
強い衝撃を与えられれば吹き飛ばされ地面に叩きつられる。
「秀ちゃん!!」
赤い赤い彼の服。
暗くても分かる酷い傷。
自分の為に傷付く彼。
「や、やめて…」
それでも一方的な攻撃は続く。
血が飛び散る
赤い髪が乱れる
「や、やめて!!…逃げてよ、秀ちゃん、もういいから逃げて!!お願いだから、私なら大丈夫だから!!!」
ゆらりと立ち上がる秀一
俯いたままの彼の体はふらつく
「お願い、お願いだから…行って、秀ちゃん…。」
もういい。
もう十分だ。
これ以上、彼の傷つく様など見たくない。
「無理だよ。」
「でもこのままじゃー…」
「君はいいの?こんなのに好きにされて。」
「い、いいわけないでしょ!?でもここで二人とも殺されるなんてー…」
「俺はー…」
上げた翡翠が真っ直ぐに彼女を見据える。
「あんなやつに犯されてたまるか。」
そして心底嫌そうに呟く。
「……。はぁ?」
(何言ってるのこの子。)
一気に真っ赤になる。
頭でも打ったのだろうか-…
いくら絶体絶命のありえない状況でも先程から彼の様子は酷くおかしい。
否、おかしいというより…
どこか異様だ。
そして、じっと彼を見つめれば気付く。
微かに口元が動いている事に。
それは自分にでもソレに対してでもない…
まるで一人で呟くように、だけど誰かに囁くように、ナニかに問いかける。
くすりと妖艶な笑みを浮かべる妖艶な彼に彼女はごくりと唾を飲み込む。
ー…ほざけ。
この死に損ないのキツネ風情が!!
触手の先が彼女の目の前で鋭く尖る。
それが彼目掛けて向っていったー…
だめー…
「だめぇー!!!!!」
瞬間体が大きくぐらりと傾けば瞳を強く閉じる。
激風が当たれば体が宙に浮いた様な気がした。
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