薔薇とお狐様1
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頭に彼の声だけが響いた。
愛しい声-…
なのに、今は吐き気を催すほど気持ちが悪い。
「…女、どういうつもりだ。」
蔵馬の鋭い目が間近で栄子を見下ろす。
微かに赤く染まる蔵馬の頬、ひりひりする栄子の手のひら。
(………あ、あれ?)
交互に見る蔵馬の頬と自分の手。
自分のした行動に気が付けば一気に青ざめて行く。
(こ、殺される!!)
蔵馬の頬を叩く日が来るなんて思いもしなかった。
そう冷静に思う反面、いざとなれば今度こそ元の世界に帰ろうと心に決める栄子。
すぐ側では信じられないといった様に目を見開きこちらを見る黒鵺の姿。
「死ぬか?女…。」
ひやりとした狐の妖気が背筋を凍らせる。
それにごくりと唾を飲み込むも、口を恐る恐る開く。
「あ、あなたにとって彼は右腕なんでしょう?そんな黒鵺さんがどうしてあなたを裏切るんですか?」
それに目の色を変える狐。
「え?…俺、右腕??」
そして、栄子の所業に放心していた黒鵺だったが、彼女の言葉の内容に「え?え?」と慌てている。
二人の様子に何かまずいことを言ってしまったのかと内心焦るもすでに遅い。
「おまえは魔女か?」
目の前の狐は栄子の顎を掴み上に向かせれば、探るように顔を覗き込む。
そして蔵馬の視線がゆるりと彼女の腕に落ちれば金の瞳が大きく見開く。
「…俺の、妖気?」
殺されると思い「帰れ!!!私!!!」と念じはじめていた彼女は呟く彼に、あれ?と思い薄目を開ける。
「………娘、おまえはどこから来た。」
揺れる金色の瞳が真っ直ぐに栄子を見据える。
************
「昔の蔵馬ってね、本当に血の気多かったんだよ?聞いた話だけど。」
テツコはくすくす笑いながら椅子に座りアイスを頬張る。
「…ふうん、今でも結構好戦的だけどなぁ…。」
それに隣では同じようにアイスを頬張る修羅。
そんなテツコに黄泉は視線を向ける。
「テツコといったか…おまえは盗賊初期の蔵馬を知っているのだな?」
「うん、聞いた話だけどね。蛇王襲撃って行ったらまだ盗賊団を作って間もない時で、色々裏切りも多かった時期なんだよ、聞いた話ね。丁度蔵馬の基盤を作っていった時期でもあるかなぁ…あ、コレ全部聞いた話だから。」
「……。」
隣では「何回強調すんだよ…」と呆れた瞳を向ける修羅。
「頭は切れるし誰よりも先を見据え冷静な彼は当時から変わらない。でも、信じれるものはきっと少なかったんだと思う…。あ、聞いた話。」
「…そう、か。」
それにどこか苦笑する黄泉。
それにテツコはくすりと笑みを浮かべる。
「でも、側に置く者は限られていたし…彼は自分が認めたものしか側には置かなかったらしいよ。」
「……。」
この娘-…
黄泉は先程から感じている目の前の少女の違和感の正体を探る。
-…どこかで馴染みのある、懐かしい何か。
「だけどさ、やっぱり心配だよね。栄子さん女性だし…。」
そんなテツコの一言に視線を向ける複数。
「まだ若い蔵馬だし、欲にも忠実だもんね。」
やられなきゃいいね~と笑う彼女に固まる数名。
「…妖駄、栄子の様子を見せろ。」と、躯が妖駄に掴みかかり、隣では「邪眼では無理か。」と額に手をあて舌打ちをする飛影の姿。
「…おまえ何しにきたんだ?」
側では修羅が呆れた視線をテツコに向け、黄泉はこんな知り合いやはりおらん…と眉を寄せるのだった。
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