- Everlasting scar - 永遠の傷跡
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- Everlasting scar Ⅱ -
本を片手に窓から見下ろす
頬杖を付き、伏せた翡翠の先に映る女性
るんるんと大きな箱を抱え隣の家に入って行く-…
(また懲りずに…。)
微かな笑みが口元に浮かぶ。
そして時計を見上げればそろそろ時間だと本を閉じた。
*********
「秀ちゃん、今日はおみやげがあるんだよ。なんだと思う??」
ふふふと嬉しそうに頬を桃色に染める五歳年上の幼なじみ。
背に隠す箱。
あれは一緒に食べるために買って来たのか…。
「ありがとう。何だろう…お菓子かな??」
あの様子からまたケーキだという事は分かっていた。
だがこんなにも嬉しそうに、当ててみて?という彼女に見ていた、とは言えない。
「さすが秀ちゃん!!やっぱ勘いいねぇ。」
年上のくせに子供みたいに笑う彼女。
無邪気なその笑みに動悸がする。
「…で、何??」
それを隠して笑みを作る。
「ふふふ、じゃーん!!」
とケーキの箱を出せば、テーブルに置いてそれを開ける。
「ケーキか、おいしそうだ。」
「でしょ、これはこの前秀ちゃんにぶつけちゃったやつね。レアものなんだよ??」
嬉しそうに隣に座る彼女の微かな香水の香りが鼻腔をくすぐる。
どれがいい??と顔を覗き込む。
「……。どれが、おいしいの??」
甘い香り。
どこか柑橘系のその香りはいつも明るく元気な彼女に似つかわしい。
いつからか彼女は「女」になった。
ずっと見てきたから知っている。
彼女の成長は蕾が花を開く様を見ているようだった。
「これとこれはおすすめだよ。で、これは今日はじめて買ったやつでね。」
すぐ側で顔を輝かせる彼女。
自然と目が行く彼女の顔。
長い睫毛に白い肌-…
-…そして、赤い唇にうなじ。
(……やばいな。)
一生懸命自分に話す彼女。
微かに伏せた翡翠が獲物を捕らえるかのように妖しく光る。
彼女の頬に伸ばされる指。
それが彼女の髪に触れた瞬間だった。
「私はこれに決定!!ふふ、早い者勝ちぃ。」
と、いきなり立ち上がるその片手にはひとつのケーキ。
「……。」
「あ、今悔しそうな顔したわね。コレほしかったんだぁ。残念。」
と楽しそうに笑う。
「…うん、欲しかった。」
そう言う彼の声は低くもどこか艶やだ。
そして不機嫌であった。
それに、じっと彼を見据える栄子。
「なに??」
「秀ちゃん、色気でたね。」
ずいっと再び顔を近づける彼女に、本当に襲ってやろうか…と内心思う秀一。
「…そう?…君は相変わらずだね。」
「ひどっ!!!」
と顔を顰める彼女に、秀一は笑う。
最近の子ってませてるから色気も出るのかなぁ…と側では首を傾げる。
「まぁ、いいや。コレ食べたら勉強だよ。今日は社会史でぇす。」
パクパクとケーキを食べながら幸せを噛締める様子の彼女。
「……。」
それに、静かに笑みを浮かべる秀一。
いつまでも無防備な幼なじみの女。
日に日に独占したくなる厄介な感情-…
「社会史万歳!!!」
(…ケーキが、だろ。)
フォークを掲げ意味不明な発言をする彼女に内心突っ込む秀一だった。
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