番外編・飛影編I
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夜の林の中に広がる草原の一体地。
そこだけが月の恩恵を受け白く輝く。
花が咲き乱れるその場所の中心に一人の少女の姿…
気持ち良さそうに身を縮め眠るその少女に近寄る少年。
赤い瞳を細め、ただその少女を見下ろす。
「飛影…ねぇ、飛影ってば-…」
「うるさい、黙ってろ。」
魔界の町。
少女の目の前を歩く少年は振り返り少女の被るフードをさらに下に引き顔を隠す。
「ここを過ぎるまで顔を隠しておけ。人間だとばれると厄介だ。」
「えぇ…ばれないよ。人型の妖怪もいるじゃん。」
「おまえといると面倒が起こるんだ。昨日の事を忘れたのか?栄子。」
「あ、あれは…」
栄子は罰が悪そうにフードの下で視線を泳がせる。
「おまえの食い意地、どうにかならんのか…。」
忌々しそうに呟き、少女を睨む飛影。
「だってお腹すいてて…まさか迷子になるなんて思わなくて。」
昨日の事だった。
その日の宿を探す飛影と栄子、留まった場所を作る事をしない飛影のその理由を知っている栄子はただいつもの様に彼の後ろを着いて行くだけだった。
だから事件が起こった…
飛影が着いて来ているものと思い込んだのもいけなかったのだが-…
いや、それよりもその日の昼食を未だ取っていないことを視野に入れておくべきだったのだろう。
気付けば栄子がいない。
人間特有の人の香り。
それが人食を好む妖怪に見つかるとまずい。
焦った飛影は来た道を焦って戻れば-…
『おじさん!!これ一個ください!!!!』
出店の前で満面の笑みを向ける少女が目に入る。
それに思わず怒りを覚えながらも自分を諌める飛影-…
『あ!!やっぱ二個ください!!!』
気付かない彼女に呆れながらも後ろから声をかけようとした飛影だったが、目に入った栄子を見る出店の主人の徐々に血走る瞳と舌なめずりをするその様子に眉を顰めた。
だからこそ声をかける前にそれの手を引き走り出す。
いきなりの行動に驚き騒ぐ栄子に、気にせずそのまま手を引き走る飛影。
『あぁぁぁぁぁ!!!!ばかぁぁぁぁ!!!』
『ばかはおまえだ!!見てみろ!!』
走りながらも後ろを振り返れば、先程の男が必死に追いかけてくるではないか。
先ほどまでは確かに柔かく微笑んでいたその男は、今ではこの世のものとは思えないほど醜く顔を歪ませ牙を剥いている。
『さっそく人食の類と出会いやがって!!おまえはとことん運のない奴だな。…いや、運がないのは俺か。』
ちっと舌打ちをする飛影。
そして、真っ青になり自分の愚かさを呪う栄子だった。
そんな昨日の今日-…
だからこそ飛影は敏感になるものの、原因である目の前の人間はあんな目にあいながらも気楽なものだ。
「でも、人食の妖怪に出会ったのも初めてだったし、追いかけられたのも初めてだったわよ?それまでは一回もなかったもの。」
一回あればそれが末路だ。
人間が襲われればまず生きてはいれないだろう。
「そうか、一度食われればいい。」
「え、それはだめだよ!!食べるのは好きだけど食べられるのは絶対嫌だ-…」
「ならおとなしくしていろ。」
飛影は息をつき呆れた瞳を栄子に向けるも、向けられた当人は笑顔で「はーい!!」等と返事をする始末。
(本当に分かっているのか?…人間とは危機管理が乏し過ぎるんじゃないのか?)
宿屋の立ち並ぶ通りに入れば、品定めをするかのように周りを見回す飛影。
「今日は野宿でもいいよ?お金なくなっちゃうよ?」
「…ここにするぞ。」
栄子の言葉を聞いてか聞かずか、どちらにせよ無視する彼は、その宿屋の暖簾をかき開け中に入れば、その後ろからちょこちょこと着いて行く栄子だった。