-本編・妖狐編ⅡとⅢの間のお話-
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「商人風情が調子に乗りやがって。」
ぼやきながら屋敷の廊下を歩く盗賊団の一人・雲海の目の前に現れたのは、たまたま部屋から出てきた黒鵺だった。思わず彼を呼び止める。
「あぁ?」
欠伸をしながら眠そうに振り返る黒鵺に、聞いてくださいよ!!と雲海は怒りの冷めない目を向ける。
「…どうした…?」
一応聞いてみる。
どうせろくでもない事で関わると面倒だと思いつつも感情的になっている彼を放って置く事は良策ではない。
彼が暴れたらこのアジトは崩壊してしまう。
彼はこの盗賊団一の腕力を持つ筋肉男で、一番頭の弱い男だ。
頭の蔵馬は、何でも使いようだと彼を一員に迎えた。
「今、頭と会ってる商人、すんげぇ態度が悪いんです!!俺の事あいつ鼻で笑いやがった!!お茶なんか入れてやるんじゃなかった!!」
「珍しいじゃねぇか…。」
盗賊団のアジト。
商人などそうそう近づかない。
「胡散臭いやつです!!黒のフードで顔を隠してやがる!まぁ、今頃頭に殺されてるかもしれねぇが…。」
茶を入れるという事は蔵馬の命令で、少なからず蔵馬自身が客と認識してるからとの事。
殺される可能性はそうそうないと思うものの、次の雲海の言葉でそこは納得する。
「お嬢を売って欲しいといいやがったんだ、ありえねぇ…!!」
なるほど。
理由次第では殺される。
「で、蔵馬はなんて?」
「先に俺が切れちまって追い出されたんです!」
だから何て答えたのか知りません。
雲海は申し訳なさそうにそう言うとありえませんよね!!と黒鵺につっかかる。
「……。」
どちらをありえないと言っているのかいささか首を傾げたくなるものの、その商人の意図が見えない。
人間の栄子を欲しがる理由も分からなければ、別に彼女を所有しているわけではないのだから売るという表現も間違っている。
売るという言葉に狐はどう感じたのか。
黒鵺は客室が血の海になってないか不安になっていく。
今日は自分が掃除当番…
(蔵馬…頼むから殺すな。)
黒鵺の思考は少しばかりずれていった。