-本編・妖狐編ⅡとⅢの間のお話-
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がちゃり-…
再び自室に戻る栄子に、ベットに寝ていた蔵馬の瞳が細く開きその姿を捕らえる。
まだ眠そうな少しけだるそうな金色の瞳。
「どこに、いってた。」
寝起きの少しかすれた低い声。
「…黒鵺の所。」
「……。」
一瞬蔵馬の眉間に皺が寄ったように見えたのは気のせいだろうか。
気だるそうに起き上がると、こっちへこいと手招きをする狐。
「…嫌。」
「なぜだ?」
不機嫌そうに瞳を細め眉を寄せる。
「蔵馬、臭いもん。」
女臭い。
いくら黒鵺が言うように何もなかったとしても、女性に触れられたのは確かだ。いやもしかしたら彼から触れたのかもしれないが…
どちらにせよ、あまりいい気はしないのだ。
「俺が?おかしなことを言う。こっちへ来てみろ。」
少し戸惑うものの、言われたとおり側に寄ってみる。
「…あれ?…お風呂入ったの?」
側まで来るとほのかないつもの彼の香りが漂う。
好きな薔薇の香り。
「入ってない、おまえはまた夢でも見ていたんじゃないのか?」
そんなわけはない。
「黒鵺に聞いたもの…。」
「何をだ?」
「蔵馬の…蔵馬の分の女の人を自分が引き受けたって…」
「ほう…。」
彼の口角が意地悪そうに上がる。
「…触ったの?触られたの?」
栄子の瞳は不安気に揺れ、狐の瞳を捕らえる。
「……。」
その方向で話が進むのかと狐はやれやれと息を付き、彼女の頭を優しく撫でる。
条件反射のように思わず気持ち良さそうに目を瞑る彼女。
しかし、それも束の間…
しばらくすると不安気な声が漏れる。
「…触った、の?」
この手が他の誰かをこんな風に優しく触れたのだろうか。
「俺が自分から触れるのはおまえだけだ。安心しろ。」
「……。」
頭に手を乗せられたまま、栄子は視線を上げ金色の瞳を見上げる。
「…そんな目をするな。」
金色の瞳が一瞬揺らぐものの、彼は目を逸らし、栄子の頭から手を下ろすとそのままベットから降りる。
「どこに、いくの?」
「今日は客が来る。」
対して乱れていない服を直しながら、おまえも来るか?と、振り返らず言葉だけを投げかける。
「…いかない。」
「そうか。なら利口に部屋で遊んでいろ。出たかったら誰かに連れて行ってもらえ。」
「……。」
ちらりと視線を窓に向ける。
魔界にしては珍しく晴れ、だ。
「…俺の勘だ、一人で出るな。」
振り返り、何か言いたそうにする栄子に狐は言葉を続けた。
静かに頷くと狐は満足そうに笑いその場を後にした。