-本編・妖狐編ⅡとⅢの間のお話-
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朝目覚めれば隣には狐の姿。
「…あれ?」
目を擦り栄子は首を傾げる。
なんでこんな所に蔵馬がいるのだろうか。
彼の部屋はここではない…
「…あ、おかえりなさいだ。」
思い出した様に手を叩く。
彼は三日ほど前から仕事に出て帰って来てはいなかった。
自分が起きたのにも関わらずまだ起きない彼を見て、よっぽど疲れていたのだと分かる。
(きっと、疲れすぎて部屋間違ったんだわ…)
ぎゅっと頬をつねってみる。
(うん…本気で寝てる)
それに安心すると彼に近づき、顔を覗き込む。
今までにも目覚めれば狐が隣にいる事は多々あった。
そういった時は決まって額におはようのキスを落とし、優しく微笑む。
最近はなぜか少ないが…。
毎度見られてばっかりの栄子は狐の寝顔を拝んだことはない。
起きていてはなかなか至近距離で見れないそれ。
(…綺麗な顔。)
ここぞとばかりにじっと彼の顔を覗き込む。
銀色の癖のない絹のような髪。
陶器のようで、シミ一つないすべらかな白い肌。
男の人に似つかわしくない薔薇の香り。
長い睫毛に整った目鼻立ち。
そして…形の良い唇。
狐の唇を見つめたまま、栄子は自分の唇に触れる。
あの時狐にされたキスを思い出す。
初めての唇へのキス。
それは想像していたような甘く優しいものなどではなく、野生動物に食べられそうな、そんな錯覚を起こしてしまいそうな荒々しいのもだった。
あれから、狐はなにもしてこない。
分かっている…
それを私が望んだのだから。
受け入れるわけにはいかない。
…ただ、唇に残る熱がまだ冷めない。
栄子はゆっくりと顔を近づけた。