薔薇とお狐様1
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見つかった…
「ネズミが一匹入り込みやがったみてぇだ!!早く探せ!!」
すぐ側ではバタバタと廊下を走る複数の足音。
「頭が帰って来るまでに捕まえるんだ!最近の頭は血の気が多くておっかねぇからな!!」
「こえぇ!!!見張りの奴は確実に血をみるな!!」
そして複数の男達の声。
声が過ぎれば柱の影から、そうっと顔を出す栄子。
(やばい…)
屋敷への侵入は容易かった。
隠し扉も通路もなんとなく記憶していたから問題はなかったのだ。
だからだろう。
結構簡単そうだな…など思い、一瞬でも気を抜いたのがいけなかった。
記憶の中にある隠し階段がある部屋で、まさか団員たちがいることなど予想しなかったのだ。
蔵馬と過去で過ごしていた頃、その部屋は頭と副総長以外は入ってはいけない場所だったから。
安易に扉をあけて目があえば静かに扉を閉め、ダッシュ。
そして今に至る。
屋敷内でよくかくれんぼをしていた自分に万歳だ。
とっさに身を隠した柱の影は左右上下どこから見ても死角になっている入り組んだ場所。
そこでしばらく事が治まるまでやり過ごそうと身を潜める。
どれ位時間が経ったのだろうか-…
数十分…一時間??
とても長い間その場所に居た気がする。
そっと顔を出し辺りに人が居ないことを確認すればそろりと足を出す。
足音を立てないように木の廊下を歩く。
それでもぎしぎしと微かな軋みが響くのは仕方がない。
先程団員たちがいた部屋へ戻れば、次こそはゆっくりとそこを開ける。
いくら団員入室禁止の場所でも、当時からこの部屋には鍵が掛かっていない…
団員入室禁止のくせに鍵をかけない
なぜ蔵馬はそんな風にしたのだろうか…
下手をすれば大事な隠し階段がある場所を晒すことになる…
そして思い出す…
蔵馬は仲間思いな頭だったが、全てに気を許していたわけではなかった
疑り深いのはきっと変わらない
(そっか…だから鍵をかけないんだ。)
安易ではあるが彼は仲間を試しているのかもしれない…
彼に対する忠誠心と誠実性があればまず禁止とされているこの部屋に入ることはないだろう。
そして、入るなと言われる部屋に大事な物が隠されていると思う反面…
鍵の掛かっていない部屋に大事なものを置くか?とも思うだろう。
(…惑わす?)
実際この先に大事な宝庫があるのは確かだ。
蔵馬の思考は難しい。
「…あの頃、無断入室ってあったのかな。」
先程の光景を思い出せば彼がいなかった時はあったのではないかと思う。
(……ううん、今はそれ所じゃない。)
頭を振り気持ちを切り替える。
どこか蔵馬の心情を寂しく思う反面、今は秀一の事が先決だ。
隠し扉の方へ歩み寄る。
大きな大きな本棚…
すぐ横にある鉢に入った植物。
それに当時、蔵馬が言っていた言葉を囁く。
キィィィ…
緑の植物が微かに声をあげ反応すれば、本棚はぎぎぎっと音を立て半分に割れ左右に開いて行く。
(……慣れって怖いな。)
ちらりと植物に目をやる栄子。
そして現れた地下へ繋がる階段を降りて行くのだった。
私は気づかなかった-…
「頭が帰ったぞ~!!!!」
その時刻、屋敷の外が騒がしくなっていた事に。
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