薔薇とお狐様4
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ーーーー…
真っ暗な空からハラハラと雪が降る
そんな外の様子を窓から伺う白髪の少年の姿がそこにあった
「今夜は大雪ですね。それにしても寒いですね、頭。暖炉のマキも少なくないですか?」
そこは妖狐、蔵馬の部屋。
読書に夢中になっている頭でもある蔵馬に、琥珀は夕食を運びに来たのである。
「寒いな、足してくれ琥珀。」
本から視線を上げる事もなく、ソファに凭れ頬杖を尽きながら蔵馬は言う。
「……本当に冬は引きこもるの好きですね。」
はぁっとため息を尽きながら暖炉にまきを足していく琥珀。
「夕食も早く食べないと冷めますよ?」
「あぁ。」
返事だけ、だ。
顔すらあげない蔵馬を、呆れたように目を細め見る琥珀。
ここに「彼女」がいれば本に釘付けになることも夕食が台無しになることもないのだろう。と内心思うも言えるわけもない。
彼には記憶がないのだから。
今までにあった当たり前にあった日常に戻っただけ。
そう思うも記憶がある分、自分だけがぽっかりと心に穴が空いたような気分だった。
誰に打ち明けることも相談すら出来ない出来事。
ふと違和感を感じる琥珀。
少年の視線が蔵馬の前にある机に向けられる。
「…頭、珍しい栞持ってますね。」
「??…あぁ、これか?」
そして今まで何を言っても顔さえ上げなかった蔵馬が視線を机の上に向ける。
「…お宝ですか?」
ならば納得だ。愛でている物ならば興味もあるだろう。
「いや。そうゆうわけじゃないんだが…あったんだ。ドアの前に、袋に入って置いてあった。」
机の上にある栞を手に取る蔵馬。
それは桃色の花びらを花の形に和紙に付けた可愛らしいもの、そして明らかに手作りの栞だった。
「…それは、人間界の桜の花びら、ですよね?」
「みたいだな。」
「…珍しいですね、捨てないんですか?誰からのプレゼントかも分からないのに。」
蔵馬は基本価値のないものに興味はない。
おそらく「彼女」の贈り物であろう栞だが…記憶のない蔵馬からしたら捨てても決しておかしくはない。
「…誰からかも分からないのに気持ち悪くもないんですね。…もしかしたら頭の情婦の一人が頭に贈ったものかもしれないですよ?」
分かっていても言わないし、言えない。
「ないな。香水の匂いなどしない。それに…」
形の良い唇が弧を描く。
「意外と気に入っているんだ。」
栞を見る金の瞳が緩やかに細められ、ゆるりと…あたかも自然にそれに唇を寄せた。
そう、それはまるでー…
「……。」
「…なんだその顔は。」
「は、い、いえ、いえいえ、なんでもありませんよ。」
気付けば口をぽかんと開いたまま真っ赤になっていた琥珀だったが、不思議そうにこちらを見る狐に、慌ててぶるぶると頭を振る。
おかしな奴だな、と笑みを零す蔵馬。
それに、釣られるように頬を緩める琥珀。
そう、それはまるで、
ー…愛おしむように…
それから数年か、数十年か…
桜が舞うその季節-…
また巡り合う-…
ー薔薇とお狐様endー
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