薔薇とお狐様4
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低い声が響いた
少し掠れた声
それでも甘い
しばらく聞くことのなかった
「琥珀…誰が俺の代わりになれと言った?」
愛おしい声がー…
ガラスケースの蓋が地面に落ちていた
彼女はただ目の前の光景に目を見開く
赤い髪が靡いた
翡翠の瞳がこちらを見ていた
さも不機嫌そうに琥珀を見ていたそれも彼女の姿が目に入ればゆるりと温かみを帯びる
「秀、ちゃん…」
出る声は自分自身どこから発っせられているかも分からない
体が震える
熱が胸から体中に駆け巡る
「栄子、ごめん…遅くなって。」
夢じゃ、ない…
「しゅう、秀ちゃん…、っ秀ちゃん!!」
琥珀の腕を振り払い彼に抱きつく。
「秀ちゃん、会いたかった!!会いたかった!!う、う…ううう~!!うわぁ~ん!」
彼の体を力一杯抱きしめる。
暖かな体温。
甘い彼特有の香り。
そして、抱きしめ返してくれる力強い力…
「ごめん。心配かけて…ごめんね、栄子。」
耳元で優しく囁かれる声にさらに彼女は子供の様に泣き叫ぶのだった。
そしてー…
「蔵馬、どういう事か説明してもらおうか?」
躯の不機嫌な声が響く。
「あぁ、すみません。…居たんですね。」
「「「「……。」」」」
しらっとそんな台詞を言う彼に相変わらずだと面々は思う。
「嘘です。皆、心配掛けてすみませんでした。…しばらく仮死状態だったんですよ、俺。」
「仮死だと?」
にっこりと笑う狐に躯が怪訝そうに眉を寄せた。
「えぇ、全部思い出しました。俺はー…」
ーーー
ーーーー
『生死を彷徨う状態に陥った時に一度だけ仮死状態となり体内回復を見込めます。瀕死状態ですが、本当に死ぬ間際といってもいい時です。…ですが、これは一つ欠点があります。』
蛇族の遺品の一つ。
蔵馬が琥珀に鑑定を頼んだ一つの小さな小瓶に入った液体だ。
『これを使うのはお勧めしません。使えば妖怪の誇りを失います、頭。』
そう、琥珀は銀髪の妖狐にそれを渡しながら言った。
そうそれこそー…
「俺はもう妖狐化出来ない。」
翡翠の瞳が微かに伏せられた。
「もう、俺に妖怪の血は流れていない。」
『命を繋げる代わりに、妖怪の生命力全てを使いただの人型にする薬です。』
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