薔薇とお狐様4
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢を見たー…
桜が舞う季節
桜の木の下にいた貴方に私は駆け寄る
銀の髪
金の瞳を持つ
人外の美しい妖怪
妖狐•蔵馬
愛してる
そう言って抱きしめてくれる
人より低い体温
秀一より低い声
だけど変わらない甘い香り
酔いしれる
夢の中だけでも
サラサラと吹き抜ける風
攫われる
「さようならだ
栄子…」
嫌だ
嫌だよ
サラサラと攫われる
香り
温もり
声ー…
蔵馬の手が腕が風に攫われる
砂の様になくなっていく
サラサラと
風に運ばれ光り消えていくー…
嫌だ、嫌だよー…
蔵馬…
秀ちゃん!!
砂を掴む手
跡形も消えるそれに
私はその場に崩れ落ちた
「栄子、おい大丈夫か?」
「!!」
気付けば躯に肩を揺さぶられていた栄子。
いつの間にか躯の部屋に戻り座り込んでいたらしい彼女はゆっくりと周りを見る。
(あ、私…)
懐かしい風景に見慣れた面々が視界に映る。
「…やっと帰ってきたか、心配ばかりさせやがって。」
飛影は壁に凭れたまま呆れた様に赤い瞳を細めふんっと鼻で笑う。
「おかえり~!栄子!!」
そしていきなり抱き着いてくる修羅。
「しゅ、修羅くー…」
「引っ付くな。」
ざくっ!!
修羅の足元に刺さる飛影の剣。
「あっぶねぇな、飛影!これは年下の特権だぜ?なんだ羨ましいの?」
「死ぬか。」
ぎゃぁぎゃぁと騒ぎ出す二人。
それを見て苦笑しながらやれやれと両手を広げる躯。
「蔵馬は、だめだったんだな?」
そして、次に発せられた黄泉の低い声色に辺りは静まり返った。
どくりと彼女の胸が脈打つ。
「あ、あの…」
(そうだ、私が先陣切って行ったから…もしかしたら、他の人だったらー…)
今更悔やんでも遅いことはもちろん栄子も分かっていた。
だがー…
「ごめん、なさい…私ー…」
それでも琥珀の命を選んだのだ。それを後悔したくはない。だが、ここにいる彼らにとってそれは蔵馬の生死とは関係ないことだ。
彼女の前に出る黄泉。
今だしゃがみ込む彼女と目線を合わすように膝を折ればー…
「お前のせいではない。むしろ死者を生返す事の方がおかしいのだ。…理を曲げる事の罪は誰もが本当は分かっていた。」
禁術が良い例だ。と黄泉は見えぬ瞳を微かに下げる。
「……。」
「これでお前が死ねば蔵馬に俺たちがあちらに行った時に殺さねかねん。…もう自分を責めるな。おまえの選択は間違ってはいない。」
「!!!」
「何があったのか分からんが…苦渋の選択だったのだということ位は分かる。」
黄泉は心拍数や息遣いなどから相手の精神状態を読み取る術を持つ。
「よ、み…さん。」
側では、ひゅうっと口笛を鳴らす躯。
意外な奴が良いとこ取りだな、と面白くなさそうに息を着く。
「私…自分の事ばっかりでした。今回も、私の勝手で…自分の気持ちに区切りを付ける為だった。…生き返って欲しいのに私は…私はー…それでもー…」
「おまえはー…」
「…まぁ栄子ちゃん。魔界では常に生死と隣り合わせなわけだ。だから、今回の蔵馬の事は俺達は初めから納得してた。だから今回は全てお前自身の為で良いわけだ。わかるか?」
黄泉の言葉を遮った躯はニコリと笑みを浮かべながら栄子の頭を撫でる。
「…忘れるな、心に刻め。そして前を見ろ、少しずつ。」
「む、躯さん…」
じわっと皆の優しさに目頭が熱くなる栄子。
「結局、おまえか、躯。」
一連を見ていた飛影が呆れた様に息を着く。
黄泉に慰められていたのが気に入らなかったらしく、黄泉が彼女の頭を撫でようとしていた手は宙を掴んでいた。
大丈夫…
大丈夫だわ。きっとー…
なんとかなる、なんとかなるよ。
今にも泣きそうなのを堪える。
ここに貴方がいない事にー…
貴方だけがいない事にー…
「栄子、助けて~!」
「逃げるな。」
修羅と飛影の攻防戦が再び始まる。
当たり前の幸せに
今笑えるのも、きっと本当だから。
「飛影…修羅くん、兄弟みたいだね。」
「「こんな兄(弟)願い下げだ」」
そして、そんな三人が笑う?様子を見る黄泉と躯。
黄泉が隣の彼女へ視線を向ける。
じっと栄子を見据えたままの躯、微かにその瞳が揺れる。
「…過去に残るのかと、思ってたんだがな。」
そう呟く。
「……なるほど。過去のあいつからもぎ取ってきたのか。」
「いや、すんなり過ぎて何もしていない。…執着が薄かったのか、それともー…」
「なんだ?」
「いや、なんでもない。俺の考え過ぎか…」
「ふっ、考え過ぎるか…、俺もだ。」
「……。」
「……。」
まさかな。と顔を見合わせる二人だったー…。
・