薔薇とお狐様4
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そしてー…
洞窟を出た矢先。
ピリッと感じる妖気に、後ろに続く栄子と琥珀に腕を出し制する狐。
「待て、何かいる。」
「「!!」」
まさかまた蛇族の関係なのか。
しかし、不安に過ったそれは杞憂だと林の中から此方に向かってくる人物の姿を見て栄子が目を見開いた。
「よぅ。やっと見つけたぜ。」
オレンジの髪を掻き上げるその人物。
安心からか、はたまた疲れているのか気怠げに息を付く彼女ー…躯は栄子を含め三人を視界に入れ呟いた。
「躯さん、どうして…」
驚く栄子。
無理もない。
彼女はたった一人で過去に来たのだから。
だからこそ躯がここにいる理由は一つしかなかったのだ。
そして躯と彼女の様子から状況が読み取れない狐と琥珀ではない。
「迎えに、来てくれたんですか?」
「あぁ、誰かさんが腕輪を壊すから仕方なくな。」
目頭が潤む栄子にやれやれと苦笑する躯。そして続く躯の言葉。
「…やはり、蔵馬に壊されたのか?」
チラリと狐に瞳を向けるが、すぐに栄子に視線を戻す。
(ー…やはり。か。)
ストンと狐の胸に何かが落ちる。
すでに仮定ではなく決定だろうと思う、己と栄子との関係を狐は改めて感じていた。
琥珀はそんな狐をじっと見ていた。
「帰ろう、栄子ちゃん。」
そして、次の躯の言葉に一瞬静まる空気。
狐と琥珀の視線が栄子に向けられる。
「…帰ります。…だけどもう少しだけ待ってもらえますか?」
「??…構わないが。…水は手に入れたのか?」
それに、笑みを浮かべ首を振る彼女。
「いいえ。…というかごめんなさい。水はもうないんです。私の勝手で、使ってしまいました。」
それにどこか申し訳なさそうに俯く琥珀に、ひゅうっと口笛を吹く躯。
「なら、お前は俺の嫁だな。栄子ちゃん。」
「いえ、嫁は無理です、躯さん。」
「何を恥ずかしがる。あんな男に操を立てる必要ももうないだろう?庇うまでは良しとしても大事なお前を残して死んでしまう様な間抜けな男などさっさと忘れろ。」
確信犯なのか、チラリと蔵馬に視線を移し言う躯に栄子は焦る。
「む、躯さん!その話はまた帰ってからで。とりあえず、蔵馬さん。せめてここにいる皆さんにだけ挨拶はして帰りたいんで、夜に帰ってもいいでしょうか?」
「……。」
「なんだ、ここの狐もおまえにひどく執着ー…」
「躯さん!黙ってください!」
(いらないこと言わないで~!)
「…わかった。」
ポツリと呟く狐に、琥珀は目を見開き、彼女はありがとうございます、と頭を下げ、躯はへぇ~と面白そうに笑みを浮かべる。
「だが勝手に帰るな。…いいな?」
「ありがとうございます!蔵馬さん!!」
嬉しそうに笑う栄子。
そんな彼女をただ真っ直ぐと見つめる狐。
そして、そんな狐を琥珀は見ていたのだった。
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