薔薇とお狐様4
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そして、少し落ち着いた彼女は狐に笑みを向けた。
「秀ちゃんも私の立場ならきっとこうしていました。」
彼女の笑みは今だ満面の笑みではある。
だが、琥珀に向けられた笑みと狐に向けられたそれはどこか違った。
それは彼女を見ていた蔵馬だからこそわかる違い。
陰る笑み。
笑みの裏に見え隠れする、己をみて微かに揺れる悲しみの色に狐が気付かないはずもない。
「……。」
ー…本当に帰せるか?
自問自答する狐は、微かに眉を寄せる。
今だからこそ分かる。
確信めいたそれは彼女がこちらを見つめる瞳が語っていた。
どうして今まで気が付かなかったのかー…
己を通して見るそれはー…
ー…誰かではない。
「蔵馬さん?」
何も言わず栄子を見つめる狐に彼女は首を傾げる。
それに気付けば、すっと瞳を逸らす狐。
「いや、何もない。…ここから出るぞ。」
踵を返す。
ー…ここの処理は後で人を送る。そう言って。
赤毛の男、シュウの皮を被っていた蜥蜴は術が解け、本来の姿を取り戻しているものの、すでに廃人と化し巫女から離れた場所でぐたりと地面に這いつくばっている。
時折小さく唸り声を上げるものの、起き上がる気配もない。
そんな彼が気になり振り返る栄子の手を引く琥珀。
助からないと、首を振る琥珀に彼女は下唇を噛み締めながら瞳を伏せ共に狐の背を追い歩き出す。
琥珀は思う。
脳裏にある先程の赤毛の男。
それを見た栄子の表情。
そして巫女の言葉に、植物で出来た武器…
それらは何を表すのか。
パズルのピースが合わさっていくそれに琥珀は思わず眉を寄せる。
一体、蔵馬の未来はどんなものとなっているのかー…
ただただ、不安が胸に過ぎるのだった。
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