薔薇とお狐様1
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落ちる…
落ちる…
落ちて行く…
緩やかに…
まるで風の一部になったように落ちて行く-…
『栄子さん…』
そしてどこからか愛らしい女の子の声が響く-…。
『栄子さん…もし、…-と会ったら…』
この声は…知っている、誰だっけ…
えっと-…
『もし会ったら-…こう言えばいいよ』
『こう言えば……良い…』
この声は…
誰の声だっけ-…
虚ろになって行く意識に飲まれていく。
***********
薄っすら開いた瞳が星が輝く夜空を見ていた-…
そして、生ぬるい風が肌を撫でれば栄子は、はっと覚醒し慌てて身を起こす。
すぐさま周りを見回し誰も居ないことを確認すれば、自分の身も確認する…
穴に入る前となんら変わりないその様子に、ほっと息をつく。
そして…
目の前に佇む大きな屋敷を見上げた。
あの頃から変わっていないその屋敷に、これはあの時とそう変わらない時代なのだと理解した。
盗賊妖怪・蔵馬の屋敷、だ。
運の良いことに裏の林に落ちたため見張りも気づいてはいない様子。
そろりと人気のない通りから近づき屋敷を背に、隠し扉を目指し歩く。
そして、幼い自分のつけた落書きがないことから今は自分と会う前なのだと理解する。
数年前か…
数十年前か…
それとももっと前なのだろうか…
妖怪にとっては知れている数字なのだろうか、人間にとっては大きい。
大きな大きな屋敷。
でも私は実際数年住んでいた懐かしの屋敷だ。
(やっぱり私が一番の適役じゃない。)
正直、宝庫の場所も覚えてる。
団員達の部屋のある場所も…
人が少ない通り道も…
**********
「…この穴の奥が過去なのかぁ。妖駄って無駄に年食ってるわけじゃないんだな。」
過去の穴を覗きながら言う修羅。
同じように未だ覗く数名。
心境はさまざまだが、本当に大丈夫なのか未だに気になる躯に飛影。
まるで我が子を知らない土地に送り出すような気分、…否、それ以上の心境であるため落ち着けるわけもない。
「確認だが…先程の妖具には妖気は含まれていないのだな?妖駄。」
同じように過去への穴を覗きながら黄泉が呟けば、ぎょっとして妖駄を見る躯と飛影。
「心配ございません。あれは妖具といっても機械でございます。機内に少々の妖気は含まれますが妖気を感じるような代物ではございません。」
それに、ひやひやしたぜ…と息をつく躯だったが、すぐ隣では何かに気づき目の色を変える飛影。
「だめだ、あいつを戻せ妖駄。」
焦る飛影に、躯もはっとする。
「できません、彼女が願わない限り戻ってこれない仕組みになっております。」
それに「くそ…」と顔を歪める飛影。
そうなのだ…
忘れていた…
躯は眉を寄せ唇を噛む。
あれが身に着けているものは…
秀一がやったものが含まれる…
それは-…
敵意の妖怪を焼き尽くすほどの狐の妖気を含ませた代物だ。
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