薔薇とお狐様4
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血飛沫が目の前で上がった
本来なら血生臭い場面を彼女の前で良しとは思わない狐もこの瞬間は違った。
栄子の瞳に光が灯った瞬間、「助けて」と口を開いた瞬間に溢れ出た巫女の殺気は栄子の首をはねる一歩手前だった。
自分の物にならないのなら…、本能とは時に怖し。
狐に睨まれた蛇は狐が自分に向ける牙が脅しではないことは分かっていた。
今にも殺されそうなのに牙を向かないのは狐の思惑があったからだと賢いそれは分かっていたのだ。
獲物は狐の弱みだった。
だからこそ危険な真似をして獲物を傷付けられたくないのだろう。
蛇を見つけた瞬間に首をはねればいいものを、大事な獲物を絶対に傷付けたくないが為に狐はすぐ動く事はなかったのだ。
それが分かる蛇だからこそ苛立ちは凄まじいものだった。
だがそんな事を知る由もない狐は、ただ確実に蛇を殺り、獲物を救う方法を探っていた。
そして、蛇が追い詰められ獲物に尚も交渉を持ち掛けた事によって分からされた。
それしか蛇は助かる術がないと言う事だ。
否、たとえ蛇が獲物の皮を被る事に成功したとしても確実に狐は殺していただろうが。
そして最後は獲物の気持ちだった。
生きる気がないものに、もしもの場合逃げる事もままならなければ意味がないのだ。
だから狐は彼女が生を求めた瞬間に迷わず蛇を植物の蔦を飛ばし絶命させた。
同時に彼女の体を拘束する縄もそのまま切れば案の定、彼女はすぐさま起き上がりこちらに走り出そうとした、だがー…
「栄子!!」
走り出そうとした足はすぐ止まる。
巫女の体が沈む血だまりの周囲を見回す栄子。
焦った狐は彼女のそばに駆け寄り腕を取る。
「一体なんの真似だ!?」
この娘は一体何を考えているのか。蛇が死んだとしてもまだ何があるか分からない。
「あった!!」
彼女の瞳が一点で止まれば、狐の腕を振り払う。
そして狐は仰天した。
血だまりに手を突っ込んだ彼女に。
そして、彼女が取り上げたそれに狐は目を見開いた。
奇跡の水ー…
「これが奇跡の水ですよね!蔵馬さん!」
「…あぁ。」
狐は頷いた。
嘘を付く気はもうない狐は、ただ静かな胸の痛みだけを感じる。
ー…生きているならば。
だが、だからといってみすみす返す気になるわけではない。
そして、彼女は奇跡の水が入った小瓶を持ち少年の側に駆け寄った。
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