薔薇とお狐様4
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ーーー…
ーーーー…
「さぁ、お行き。おまえは…あれの愛しい愛おしい男……」
白い華奢な手が男の頬を撫でる
ゆらゆら揺れるろうそくに灯された火
薄暗い洞窟
ふらりと出来る男の影は静かに闇に消えて行く
「馬鹿な女…下等な存在のくせに…あの方まで愛しているだなんて…」
ぎりっと女の握る拳から血が流れる。
長い黒髪が揺れる
「もう少し…もう少しだわ。」
女のか細くも歓喜に満ちた声が洞窟に広がった…
************
「琥珀、飯!!!!」
「どれだけ食べるんですか、黒鵺さん!!もう15杯目ですよ!!?」
それは朧車での事。
夜祖会4日の朝。
腹を空かした黒鵺が早朝に戻ってくれば琥珀が叩き起こされたとは言うまでも無い。
宴会場から昨晩の食事の残り物を貰い、飯を炊き琥珀は今最高に眠いながらも黒鵺の相手をしているのだ。
琥珀は嫌だとは言えない。
それだけ黒鵺はこちらに来てからも働いているからだ。
蔵馬の命令で魔女の元まで行ったり、使い魔と連絡を取り合い屋敷の状況を調べたり…
右腕とは響きはいい。一番信用されているのももちろん、だが…だからこそしなければならない仕事は多々ある。
「おかわり!!!!!」
「わぁ~~!!窯の米がなくなりました!もう薬草しかないです、これ食べて眠ってください、黒鵺さん。」
にっこり笑みを浮かべ棒読みの琥珀。
「なんだと?もうないってのか!!?」
「今、宴会場のキッチンで栄子さんが何か作ってますけど、そんなにまだ何か食べたいなら行ってきたらどうですか?」
「……。蔵馬は?」
「…さぁ。朝なんで栄子さんの所にはいないかもしれませんが、いるかもしれませんね。」
「なんだそれ。」
朝とか関係あんのか?と不思議そうに眉を寄せる。
「…それはそうと、あれの目星はついたんですか?」
ぽそりと言う琥珀に黒鵺の表情は変わる。
瞳を細め、あぁ。と声を潜め呟く。
「やっぱり…蜥蜴さんを…ですか?」
朧車の中故、周りを警戒する必要はなくとも声を荒げることは互いに控える。
「…あぁ、死体がないからな。きっとな。」
「………。」
「あんま期待しねぇほうがいい。生きて様がろくなもんじゃねぇだろうな。」
「……まさか…こんな事になるなんて、思ってもみませんでしたね。」
ふうっと困ったように眉を寄せる琥珀に、黒鵺も「全くだ…」と両手を上げる。
「掻き乱されるのは良くねぇ。だから元々俺は嫌だったんだ。人間で女で、弱っちいくせに面倒しか残さねぇ…。」
「でも、雲海さんを助けてくれました、頭の命も。」
「……分かってる。」
「ならいいでしょ?命の恩人で
、仲間なんです。……何が気に入らないんですか…。」
「………。」
ふいっと黒鵺は瞳を逸らし、どこか神妙な表情を浮かべた。
「黒鵺さん?」
様子が変な彼に少年は顔を覗き込む。
「蔵馬が…」
「頭が?」
「……冷静じゃない。」
「………。十分、冷静に見えますが。」
「…違う、そうじゃなくてだな。あぁ…何言ってんだ、俺。言葉がみつからねぇ…。とにかくだ、あいつはあの女が来てから、危ういんだよ!?」
「少しでも危険な目は摘んでおきたい。右腕の鏡ですね。黒鵺さん。」
へぇ…と呆れた様に目を細め言う琥珀。
そして、もう少し静かに話してください、と冷静に言う。
「…はまりすぎた。良くねぇ…。俺だって栄子は嫌いじゃねぇ…。だから、まずい。」
「……どっちの心配してるんですか?」
「蔵馬に決まってる。だが、あいつの執着はきっとだめだ、良くない。」
はぁ…と頭をがしがしと掻く黒鵺。
「……。」
そんな黒鵺を怪訝そうに見据える琥珀。
「………まぁ、いいや。俺、そこらへんで飯食って来るわ。まだ腹減ってるし。…じゃぁな、こは-…」
がしり
立ち上がろうとする黒鵺の肩を掴む琥珀。
意味が分からず顔を上げれば満面の笑みが黒鵺を見下ろしていた。
「僕はまだまだ若くて未熟者です。でも…盗賊とて真意と真心を踏みにじるような下衆な真似は許せません。…黒鵺さん。」
琥珀の子供とは思えない威圧感に、ごくりと唾を飲み込む黒鵺。
「貴方は…頭に何を頼まれたんですか?」
別名、裏の副頭…琥珀。
誰も知りえない、黒鵺同様に蔵馬が信用を置ける一人である幼くとも学に優れた少年。
団員の雑用を主にしつつも、なぜか蔵馬の仕事は絶対関わっている少年。
琥珀の勘はいつも鋭い…
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