薔薇とお狐様4
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月明かりが朧車の窓から狐の寝室に差し込む
静かな空間
微かに耳にはいるのは先程まで泣いていた女の寝息
その隣では膝を立て掛け、長い髪を掻き上げながらただ静かにそれを見つめる妖狐の姿。
切れ長の金の瞳が内に秘めた意思を含んだまま微かに揺れていた。
ーー…
ーーー……
賊の遺体の間を歩いていく躯 。
馬鹿でかい男の声を背に受けながらも彼女は止まる事はない。
狐達が帰ってくるのは一週間後。
気長に待つ気がない躯はそう聞けばすぐさま歩き出した。
居場所を知らされていない大男。
ー…使えない。
狐の妖気を辿る方が早い。
そう結論が出た彼女だったが、大男の声に混じり自分を呼ぶ女の声に振り返る。
「…なんだ?」
「躯様、彼女の身が心配なら私が水晶でお見せ致します。朧車での移動は飛竜よりも何よりも早ようございます。どんなに妖気を辿った所で、この広大な魔界。躯様と言えど一日、二日で着く場所ではないでしょう。」
「…そうだな。頼む。だが、どちらにせよ連れて帰るつもりだ。もうそんなに時間もない。…俺がはじめから来ればよかったぜ。」
来た瞬間、妖怪を何百も葬ってしまった躯。
どうせこうなるなら自分が来て、狐を脅し奇跡の水を持って帰った方がやはり容易かったのだと改めて思う。
そうすれば要らぬ心配もなにもなかったのだ。
多少狐に傷を負わせ、狐の仲間に手に掛ける事になったとしても、己の大事な友人のためなら未来など多少変わっても構わなかった。
躯は酷く後悔していた。
自分が過去のここへ来た瞬間のあの光景が何より躯の胸を抉ったのだ。
賊同士の争い、血臭…
こんな場所に、こんな世界に彼女を一人で行かせてしまったのだと、どれだけ己を責めたか。
「ユーリ、ついでに奇生水の場所も見てくれ。」
「わかりました。躯様…つきましては、一つお願いがございます。」
「なんだ?早くしてくれ。俺は気が競ってるんだ。」
すると魔女はにっこりと笑みを浮かべ口を開くのだった。
ー…私もお供させてくださいませ。
そう言って。
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