薔薇とお狐様3
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(だめだぁ~!!最近、ストレート過ぎる…!!)
蔵馬からも秀ちゃんからも求められた事はあった
だが、拒絶してるにも関わらずアピールしてくる彼はやはり蔵馬だ。
「…気にしちゃだめよ、気にするな、私!!」
トイレの手洗いの側の壁に手をつきながら項垂れる。
わかっていた
わかっていたんだ
はじめは、ううん…しばらくの間は自分を見る目が違うから寂しいながらも安心していたんだ
だが、だんだんと自分の知っている彼の瞳になってきた
そう、ここ最近の彼の自分を見る目は、もう現世の彼の瞳そのまんまだ。
…だから、これ以上は困るんだ。
これ以上育ったらだめだ。
蔵馬は、きっとだめ。
わたしも、だめだ。絆されそうで困る。
「まだ、大丈夫…、まだ大丈夫だわ。」
だけど…
『あぁ、したいな。』
照れるわけでもなくあっさり肯定した狐
まっすぐな自分を求める彼の眼差しが脳裏に焼き付いている
(…あんなお狐様に毎回求められたらー…)
「……。はっ!!いやいやいや、だめだめだめ、何を一瞬考えた、わたし。」
頭を抱えながらふるふると頭を降る。
その時だった
-……
微かな声が耳に入る。
「??…」
周りを見回す栄子。
-…栄子
「!!」
懐かしい声…
(…なに?)
-…栄子、俺は-…ここだよ。
胸が高鳴る。
しばらく聞こえなかったあの人の優しい声色。
「秀ちゃん?」
いないと分かっているはずなのに…
トイレの窓から見える庭
遠くに見える赤い髪…
私はただ息を飲んでその姿を見つめた。
**********
その頃、蔵馬の屋敷ではー…
蔵馬の留守を見計らい屋敷は襲撃を掛けられていた。
「うおおおおお~~!!!」
今回留守番を任された雲海は-…
ブンブンと馬鹿でかい岩を繋いだ鎖を振り回し敵を片っ端からなぎ倒していく。
怪力の雲海にとって、敵の襲撃は些細なものだ。
頭の留守を狙って来たのは一目瞭然。
だが、今回は二つの盗賊団が協力して攻めてきたようだ。
それでも雲海にしては大した問題ではない。
むしろ自分だけだからこそ、周りの幹部に迷惑をかけず暴れることが出来る。
蛇族の様に怨念の炎や術を扱う一族は苦手とする雲海だが、力勝負なら負けない。
真っ向勝負なら負けたことが無い雲海はここぞとばかりに生き生きとしていたとは言うまでも無い。
「なんで、私までこんなこと…。だから滞在を許可したのかしら。」
そして、巻き込まれた魔女はかなり不機嫌そうに杖を振りかざし襲ってくる敵を魔術で撃退。
また中には蔵馬の備えた腹を減らした植物達に食われるという敵も多々いるという始末。
しかし、さすがに敵の数が多ければ雲海も徐々に疲れが見え始めるのは仕方ないことであり。(魔女は自分の立ち位置は変えない。)
「とりゃぁぁぁぁぁ!!!!」
なぎ払ってもなぎ払っても出てくる敵に嫌気が差し掛かる頃-…
雲海の耳に聞きなれない言葉が微かに入れば咄嗟に振り返る。
彼の視線の先。
少し離れた場所にいるのは、両手を天にかざした一匹の敵。
掲げた両手の先に浮かぶのは、ばちばちと電気を発しながら光る妖気の玉。
「なっ…」
魔法や妖気弾の類には滅法弱い雲海。
敵から瞬時に放たれた妖気弾。
雲海は一か八か受け止め様と体制が立て直そうとするも、たった今敵をなぎ払った体制では瞬時の構えは無理であった。
あたる!!
魔女の焦った顔が雲海の視界の隅に映る。
目の前が白く光る。
熱い光に目が眩む…
しかし-…
「……あ、あれ?」
痛みを覚悟した雲海だったが、何も感じないそれに薄っすらと目を開ける。
まさか自分は痛みを感じる前に木っ端微塵にされて死んでしまったのだろうか…そんなことまで考える彼だったが-…
「…なんだ、これは。」
不機嫌な女の声が発せられる。
風でパサパサと白い包帯が雲海の目の前で揺れる。
彼の視界に入る誰かの背中。
「あ、あんたは…って、え!!!?」
自分を庇ったと思われる女は片手を天に掲げ瞬時に小さな妖気弾を作れば軽く敵に投げる。
その瞬間-…
ズゴーン!!!!!!
地面が大きく揺れ響けば、目の前の敵陣が一気に吹き飛ぶ。
目が点になるとはこの事だ。
雲海はただ唖然とし、砂煙に包まれる目の前の光景を凝視した。
あたかも不機嫌にそうに眉を寄せる女の横顔も視界にいれて。
「躯…さま?」
雲海が唖然とする中、魔女のか細く不安気な声が女に向けられる。
それに躯と呼ばれた女はゆるやかに振り返った。
「ほう。この時代の俺はまだガキなはずだが、よく分かったな。」
感心だ。と口角を上げる。
「妖気が同じなので…それにしても、凄まじく強くなったんですね。…彼なんて、腰抜かしてる位ですよ。」
それに、腰を抜かしているわけじゃない、一連を見ていただろうと文句を言いたい雲海だったが、確かに自分の身を震わせるこの殺気と妖気はあながち間違っていないのかもしれない。と目の前の女を見て思う。
「あぁ、あまりにも妖気が溢れかえっていたから、嫌な想像しちまってな…。」
そう言えば再び周りを見回す。
「迎えにきたんだ、あいつを。どこにいる。」
笑みを浮かべているも、微かに躯の顔に焦りが映る。
「蔵馬といます。帰ってくるのは数日後かと。」
「……まだ食われてないだろうな、あいつ。」
ちっと舌打ちをする躯に、魔女は一瞬目を見開くものの「さぁ。」と苦笑するのだった。
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