薔薇とお狐様3
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「あら、噂通りのいい男ね。妖狐、蔵馬。」
狐が客室の扉を開けた直後、響いてきた声は艶やかな色のある女の声だった。
窓辺に立つ真っ黒のフードコートを着た人物はフードの下から覗く赤い唇でゆるりと弧を描く。
「客人の態度ではないな。…魔女だと聞いたが、ここへ何の用だ。」
女の発言に呆れたように金の瞳を細めソファに腰を降ろす狐。
「あら、私は仕事でここに来たのよ?」
ピクリと狐の眉が動く。
「貴方が知らないのも無理ないわね。でも依頼があったんだから仕方ないでしょう?珍しく楽しそうな仕事内容だったし、ね。」
「…依頼主は。」
「ふふっ、先に内容が気にならないのかしら?」
「……。」
「検討はついているのね。」
食えない男ね。とくすくすと笑う女。
「……。」
「まぁ、私は報酬が貰えないなら受けないわけだし。まだ決定ではないわ、ただそうねぇ…こんな吹雪の中足を運んだのだから手間賃位は貰って帰らなきゃね。」
「必要ないな、帰れ。ここでの決定権は俺にある。その手間賃とやらもその依頼主にせびるんだな。」
「あら、そう?なら呼んでくれるかしら。」
怪訝そうに顔を上げる狐に、さらに笑みを深める女。
「可愛い可愛い人間の女の子。」
瞬間空気中に鋭い妖気が走る。
チリチリと女のフードの端が焼け落ちれば、女の後ろの壁に突き刺さる真っ赤な薔薇。
「情報は誰からだ。」
禍々しくも鋭い妖気が周りを包む。まるで逃がさないとばかりの殺気を含むそれに女は楽しそうにくすくすと笑う。
「死にたいか。」
「まさか。安心なさい。誰も彼女の情報なんか売ってないわ。たとえ売ったとしても何になるの?私は嘘は行っていないわ、彼女は私を必要としているはずよ?」
「……。」
狐の思考によぎるのは、ここでの彼女自身の存在理由。
確かに栄子が未来に帰る為の手がかり唯一知っているかもしれない魔女を頼ろうとするのは事実だろう。
だが-…
「あれの思考を読んだと?魔女はそんな事が出来るのか?」
「半分正解ね。その事に関してはこれ以上は言えないわ。」
「……なら帰れ。」
話すことは無い。と立ち上がる狐。
気になる部分はあるが調べればどうとでもなる。
これ以上魔女の話に付合っていられない。そう思った蔵馬だが-…
「あなたにも大事な事よ?世の理を曲げれば歪が生まれるものよ。そうね…予言してあげる。」
女は形の良い唇で妖艶に弧を描く。
「彼女は近い内に存在自体なくなってしまう。」
それに狐の耳がぴくりと反応する。
「………どういう事だ?」
鋭い金の瞳が魔女を射抜けば、彼女はにこりと笑みを浮かべるのだった。
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