薔薇とお狐様3
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「いくら頭でもあれはあんまりですねぇ。病人に発情するなんて、獣以下です!」
「……。」
ぷんぷんと怒りを露にしながら寝床に腰掛ける栄子の腕の包帯を手際良く替えて行く琥珀。
「あ、腕の傷は大分塞がってきましたね。後はその熱だけ…ですね。はい、横になってください。」
琥珀は彼女の背に手を添え寝床に横になるように促すも、じっと自分の手首を見つめたまま動かない栄子に彼は微かに眉を寄せる。
「…怒って、ますよね。頭の事。」
ぽそりと呟く琥珀の言葉に彼女はゆっくりと顔を上げるも、その瞳はただ翳りを帯び光を灯す事はない。
「…栄子さ-…」
「琥珀君。」
琥珀の言いかける言葉に小さく自分の名を重ねる彼女に一瞬止まる琥珀は「なんですか?」と優しく笑みを浮かべる。
「私、帰れない…のかな。」
震える栄子の体。
そのまま両手をじっと見つめる。
彼女自身をじわじわと侵すその恐怖。
「……。」
「もう…帰れないのかな?」
青ざめた顔。
揺れる瞳が酷く不安気に少年を見上げる。
どこに、と聞かずとも知っている琥珀。
全部知っているわけではなくとも頭の蔵馬から彼女が別世界から来ているという事は聞いていた。
そして彼女の様子から、帰るためのものを蔵馬に壊されたのだと悟る。
確かに先程まで彼女の手首にあった白い腕輪。
それが今はない…
(…頭が、そこまでするなんて。)
モノに執着は示しても、女性に執着など見せたことなどなかった蔵馬。
「……栄子さんは、どうしたいですか?」
「え…?」
「帰る方法がないと言ったら、頭といてくれますか?」
それにしばらく呆然とする栄子だったが、すぐに顔を歪ませふるふると首を振る。
「…探す。」
「…方法がなくても?」
「…探すわ。」
そうしなければ意味が無い。と彼女はまだ震える声で言う。
「……。」
琥珀にとって蔵馬は命の恩人であり自分に学ぶ楽しみ生きる意味を教えてくれたといっても過言ではない。
だから蔵馬が望むのであればそれを叶えたいのは確かだ、だか…
「魔女なら何か知ってるかもしれませんね。」
彼女は今は仲間であり、モノでもない。
しかも蔵馬を命を賭けて助けようとしてくれた栄子。
蔵馬に罪悪感を感じながらもそう言えば、彼女の瞳に徐々に色が戻っていき琥珀の方へずいっと身を乗り出す。
「魔女!!魔女ってどこにいるの、琥珀君!!」
それに一瞬呆気にとられる琥珀だったが、一気に頬が緩むのは仕方が無い。
「ここからだと鬼頭山の黒魔女が一番いいかと思います。魔女暦も長いですし何より物知りです。ただ-…」
「行くわ!!会いに行く!!!琥珀君、場所教えて!!」
「ま、待ってください。栄子さん、落ち着いて、最後まで聞いてください。」
今にも飛び出しそうな栄子を宥め、琥珀はこほんっとせきをする。
「ただ…他の魔女より質が悪いと有名なんです。優秀な魔女で知名度はかなりありますが、払う報酬の質が悪い。」
「…私、お金ないわ。」
青ざめがっくりと肩を落とす栄子に琥珀は「いえ…お金位なら可愛いものです。」と苦笑する。
「その魔女は対象者の大事なモノを欲しがります。まぁ、魔女には多い事なんですが、例えば命だとか、体の半身だとか…。願いを叶える代わりに多大な報酬を要求されるわけです。」
「命はだめだけど…体半身って生きていけるのかしら…。腕くらいならなんとか大丈夫そうだけど…。」
「いやいや、だめでしょう。」
ぶつぶつ何やら物騒な事を呟く彼女に口元が引きつる少年。
「とにかく、明日にでもそこの場所を教えて、琥珀君!!とにかく会ってみなくちゃ話が進まないわ!!!」
意気込む栄子に琥珀は笑みを浮かべこくりと頷くのだった。
(頭…すみません。)
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