薔薇とお狐様3
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知っている眼差し
知っている声
知っている手
知っている唇
知っている体温
全てがこんなに愛しくて
こんなにも温かいのに
あなたは「貴方」に違いないのにー…
慣れた様に肌を滑る手に
肌を這う熱い唇
やめて…
やめて、蔵馬ー…
服の下から差し込まれた肌を滑る彼の手が不意に胸元へたどりつけば身が震える
「お、お願いします、やめてください…」
やっと出た声に一瞬狐が顔をあげるもののすぐに妖艶な笑みを漏らす。
何が楽しいのか
何が嬉しいのか
「ねだるならもっと別の言葉だろう?」
拒絶を表そうと上げた手を取られ、熱の籠る金をこちらに向けたまま見せつけるようにその指に舌を這わす狐。
舌の感触が直に感じれば身が更にぶるりと震える。
「いい顔だ、栄子。」
どこか妖しく瞳を細め指を甘噛みされれば思わず声が漏れる。
「やっ…」
「もっと聞かせろ。」
艶やかな低い声が響く。
銀の髪がさらり首筋に落ちる
その時だったー…
「おい、蔵馬、栄子の調子はー…」
ガチャリと無造作に扉を開け出てきた人物は目の前の状況に目を見開き固まる。
「黒鵺さん!!」
助けを求める様に顔を向ける栄子。
掴まれた彼女の手
狐に組み敷かれた栄子
必死に抵抗したと思われる乱れたシーツに肌けた衣服
そして、彼女が流す特異な涙
それにただ某然とそのあり得ない光景に立ち固まる黒鵺だったがー…
「何か用か?黒鵺。」
蔵馬の低い言葉で我に返る。
自分の名を呼び手を伸ばし助けを求める栄子の手を掴み自分の胸の中に閉じ込める狐。
「蔵馬…おまえー…」
まるで信じられないものでもみるかの様な瞳を向ける黒鵺。
「用がないなら、帰れ。後で行く。」
「黒鵺さん!!」
涙を流し懇願する栄子。
無数に首筋に付けられた狐所有の証。
まるで自分のモノだとでもいう様に黒鵺の目には映っていた。
動かない黒鵺にイラつく狐。
「黒鵺、早く帰れー…」
「帰れるか!馬鹿狐!!!」
しかし、言いかける狐の言葉に被さる黒鵺の言葉。
そのまま彼は畳み掛ける。
「栄子は怪我人だ!!人間だぞ!?まだ熱もあるし傷だってひでぇんだ!!おまえはそいつを殺す気か!!」
「……。」
狐の視線が腕の中でグズグズと泣き震える女を捉える。
「そうゆう事はこいつが体力戻ってからにしろ。今のおまえはかなり無理させちまうぜ?人間だってこと忘れんじゃねぇぞ!!」
ズカズカと寝床まで来れば彼女の大丈夫な方の腕を引き蔵馬から引き離す。
「らしくねぇことしてんじゃねぇよ。」
黒鵺はわかっていた。
傷は深いも、蔵馬の薬のおかげでほとんど塞ぎにかかっていると。
そして、蔵馬もわかっている。
黒鵺がわかっていてそれを自分に言っているのだと。
「黒鵺さぁん…」
ブルブルと震えながらもしっかりと黒鵺の腕を掴む栄子。
それを眉を寄せじっと見る狐。
扉の外からこちらを覗く入るか入らまいか迷っていた琥珀に黒鵺は「こいつを頼む」と彼女を引き渡す。
栄子の手を引き、その場から去る琥珀と栄子。
「…どうした、蔵馬。おまえらしくねぇ。」
そして彼女達が見えなくなれば、揺れる視線を今だ彼女が去った方へ向ける蔵馬に呆れた様に黒鵺は言う。
「……なにがだ。」
どこか不機嫌な狐。
それでもやり過ぎたと思っているからこそ彼女の手を離したのだろうが。
「お前ならもっと上手くやれるだろう?怖がらせてどうすんだ?女が欲しいならそう言え。お前と一夜でも共にしたい女は腐るほどいるんだぜ?」
「……。」
「……。まじか、おまえ。」
黒鵺は眉を寄せ、ただ気だるそうに銀髪を掻き上げる蔵馬をしばらく見つめるのだった。
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