薔薇とお狐様1
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闇が全てを包む
それは-…
想像を超える深い闇-…
『栄子…』
優しい声だけが闇夜の脳裏に響く-…
『栄子…愛してる。』
こぽこぽと水の音が響く-…
薄くらい部屋。
赤い髪が水の中で揺れる。
閉ざされた翡翠-…
それを呆然と見つめる栄子。
「蔵馬が死んでもう三日だ。いつまであのままにしておくのだ、躯よ。」
その部屋の前では壁に凭れ頭を垂れる女に声をかける黄泉の姿があった。
しかし何も言わない彼女にやれやれと息をつく。
「…お前達はあの娘に甘過ぎだ。それにあれでは蔵馬を見るに耐えん。」
装置に入っている為、三日経とうが未だ腐敗は進んではいない。
それでも死人をあんな所に、しかもあの人間の為にあそこから出さないなど蔵馬が不憫すぎる。
「…あれは…まだ諦めていないらしい。」
ぽそりと力なく呟く躯。
「認められないだけだ。いつか死ぬ、アレは蔵馬の死を受け入れる必要がある。」
俺が行く-…、そう言い部屋に入ろうとする黄泉の腕を掴む躯。
「…もう少し待ってくれ。今、蔵馬をどうかすればあれの精神が崩壊する。」
「それはあの娘の弱さだ。おまえのそれは優しさではない。」
黄泉の眉間に皺が寄る。
辛いのはあれだけではない…と小さく呟くも、躯が腕を離す事は無い。
「……今、奇琳を妖駄の所へ向かわせている。」
「……確かにあれは博学者だが。」
「方法が無ければ栄子を無理やりにでも狐から引き離す。…だから、頼む。」
揺れる躯の瞳。
それに黄泉は呆れた様に息を吐いた。
「…おまえはやはり女だな。…睨むな、誉めてる。」
どんなに男より強くとも女性ならではの温かさと優しさは隠し切れない。
そして、魔界の勢力の一人だった躯にここまで言わせるとは-…
死にそうなのはおまえだ…と心の中で呟きながら黄泉は躯の隣の壁に凭れるのだった。
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