薔薇とお狐様2
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ふと気がつけばそれを見る事は多かった様に思う
どこにいても目に入っていた
たいして美人でもないひ弱な人の子
なのに見ていて飽きのこない表情に行動
時に酷く追い詰めた様な暗い表情をする
そしてー…
『秀ちゃん…ごめんね。』
静かに泣くのだ…
部屋の壁が薄い為毎夜啜り泣く彼女の声
初めは気がつく事もなかった
欲の捌け口に女を抱き、それらの声でそんなか細い嘆きが聞こえるわけもない
だから、しばらくしてから知ったのだー…
彼女が泣いていた事も
あの夜だって、きっと外で泣いていたのだろう
己をそれと重ね涙を流すあれの瞳は自分を責めそれでも必死に求める
愛しいのだと
帰ってきてほしいのだと
静かながらも内に秘めた思いは激しく熱く、そして酷く悲しいものだった
あんな風に一人で泣かれては堪らない
『本ならここでよんでいけ。』
そう言い部屋に留める。
そして、いつの間にか眠りにつく彼女にどこか安心していた
だがー…
『俺なら一人で立てぬ女など願い下げだ』
-…息が止まるかと思った
ショックという言葉では片付けられぬほどの彼女の表情
驚愕に見開く瞳は動揺からか激しく揺れ酷く青ざめていた
まるで本人に言われた様な衝撃を受けるかのように…
眠る彼女を見下ろす
毒は抜け今はただ寝ているだけだが、それでも解毒剤の副作用ゆえ 少しばかりの熱が出ている
赤く上気した頬
少し荒い息遣い
そして、赤く染まる腕の包帯に思わず狐の顔が歪む
なぜ自分を犠牲にしてまで守ろうとするのだろうか
蛇族に襲われ家事に見舞われた時もそうだったー…
俺に恩を売ったところで自分が死ねば元もこうもないではないか
「ん……」
薄っすら目を開ける彼女。
それと目が合うのは見下ろしたままであった狐の金の瞳だ。
熱を孕んだ潤む瞳は一瞬宙を舞うも彼の熱い眼差しに気付き止まる。
それに苦笑する蔵馬。
「どうだ?…少しは楽に…」
狐が言いかければふいに頬に伸ばされる手。
「蔵馬…さん。よかった…。」
今にも涙が零れ落ちそうな眼差しが狐の目の前で揺れれば、狐は言いようもない胸の痛みを感じ顔を歪ませる。
…苦しい
頬に当たる熱い手を握ればそれを口に当てる
「蔵馬さん…だから、私にそうゆうことしないでください。」
力が出ないのか困った様に笑う彼女。
「……我慢しろ。心配かけた罰だ。」
そう言えば手に唇を何度も這わせる。
「勘弁してください」と真っ赤になる栄子に、生きてる事を確認しているだけだ、と真顔で言う狐。
「く、蔵馬さぁ~ん…」
真っ赤になりながら半泣きになる栄子。
ゆるりと金の瞳が静かに開かれ、手を唇に当てたまま真っ直ぐに栄子を見据える狐。
その様子に違和感を感じる彼女は、どうかしたんですか?と恥ずかしながらも首を傾げる。
「ここにいろ。栄子。」
真っ直ぐな金の瞳が栄子の瞳を捕らえる。
「…?、私ここにいますけど。」
何を言っているのか、意味がわからず傾げた首を反対に傾げる栄子。
「未来に帰るなと言った。」
甘い吐息が掴まれたままの彼女の指にかかる。
「…え?」
「ここにいろ。」
真っ直ぐに栄子を見る狐の瞳に熱が籠る。
「な…何を言ってるんですか?さては治癒の力が惜しくなりましたね?」
ヘラッと笑う栄子は、残ったらこっちに来た意味ないじゃないですか。と腕に気を遣いながらも上半身を起こし、掴まれたままの手に視線を向ける。
そろそろ離してほしいなと思うも緩む事のない力。
それに、なんだかんだ言いながも心配症は相変わらずだと思いながら、苦笑しつつも「あの…」と、ゆるりと狐に視線を戻す彼女だったがー…
瞬間、目が合えば大きく心臓が脈打つー…
真っ直ぐに見つめてくるのは意思の籠る金の眼差し
微かに細まるも決して逸らそうとしないそれに彼女も視線を逸らす事を躊躇う
「くら、ま…さん?」
動機がする
金のその眼差しは
…知っている瞳
「未来に帰す気はない。」
そのまま手を引かれれば狐の胸に倒れこむ様な体制になり、抱きしめられる。
(…え?…え?)
クエッションマークが頭に幾つも浮かぶ彼女。
その耳元で狐は低く囁く。
「俺が、飽きるほど愛してやる。」
愛など知らない
知りたいとも思わない感情
だがー…
「お前が死ぬまで愛でてやる。嫌という程。」
独占欲に輪がかかった厄介な感情ならここにある
暖かくも苦い感情
そしてそれは内にある熱を起こす
「だからー…」
ここにいろ。
戸惑い揺れる彼女の瞳が不安気にこちらを見上げれば引力に引かれるように落ちる狐の唇。
それにはっとし避ける目の前の女。
「く、蔵馬さん…冗談はやめてください。困ります、離してください。」
真っ赤になりながらも身をよじる彼女に狐は瞳を細める。
「そもそも私は人だし、蔵馬さん好みのナイスバディでもなければひ、貧乳だし…それにー…」
言いかけるそれを面倒だとばかりに顎を掴みあげる狐。
「だ、だめでー…」
「黙れ。」
焦り身を引こうとする彼女を他所に口を空いた隙を狙い強引に口付ける。
驚き身を引く彼女の身体をさらに引き寄せそれを貪る狐。
逃げようとする舌に己のそれを絡ませ味わう。
「く、っ…や…」
必死に逃れようとするも無意味だ。
今まで感じた事もない内を燻る熱が明確になり火が付く。
角度を変え何度も欲するそれは止む事はない。
さらに狐自身を追い詰め、欲はさらに加速していく。
甘く蕩ける果実
貪り味わうのは己だけで良い
目の前では真っ赤になりながらも必死に抵抗する女
だが、それに煽られる己に自嘲気味に笑ってしまう。
ベットの上に押し倒せば更に唇を貪る。
さらに強張る彼女の身体。
怪我の腕には触らず優しく脇腹を撫で上げ、彼女の唇を解放すれば首筋に己のそれを這わせる。
「や、やだ、やだやだ!蔵馬さん、や、やめてください…」
暴れる彼女。
嫌がる女を抱く趣味はないが、これは別だ。
過去に愛しい男を生返す為に来た娘
奇跡の水をほしいが為に一人で来た
危険を冒してまで身を呈する
女の頭の中を支配する別のオトコ
誰も入り込めぬ程の杭を身体にも心にも打ち込みたい
俺しか見えない様に
俺にしか感じない様に
俺だけを求める様に
流暢な事などしてられぬ
時間の無駄
欲しいなら奪えばいい
次の瞬間だった
淡く白く光り出す彼女の身体
そして同じ様に白い光を発する右手首にある腕輪
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