薔薇とお狐様2
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真っ赤な血が細い腕から勢い良く流れたー…
同時に背から黒い霧の様なものが出て行けば、崩れ落ちる人の子
やっと動く体でそれを受け止める
見慣れたはずの温かな血液
なのに、腹の底から冷える感覚に背筋に悪寒が走るのはなぜか
これはー…
なんだ?
自分を守ろう自らの腕を刺した目の前の女
震える己の手が視界には入る
香る彼女の甘い香りと
血の香りー…
そして微かな毒花の香り
「まず妖怪の血がない時点で、氷女の末裔でもねぇ。でもって時間を止めるなんざ妖怪でも種族が限られている。て、いたか、そんな種族…。」
「……。」
「今知る限りじゃ聞いたことねーなぁ、やぱ妖怪は絡んでねぇのかもな。ただの特異体質な人間なだけじゃねーの……って、おい、蔵馬。」
チッと、舌打ちをする黒鵺が目の前で女を見下ろす狐を見据える。
「…なんだ?」
「…それは妖気の気の字も感じねぇ人間だ。」
細まる黒鵺の瞳が真っ直ぐに妖狐に向けられる。
(なんて面でそいつを見てやがる…)
「……。」
「暇つぶし程度に愛でるならいいが、ハマるなよ。」
「何を、言っている…」
くすりと笑みを浮かべ黒鵺を見る。馬鹿な事を言うなと…。
「……。」
そして再び彼女に向けられる揺れる金の瞳。
「そんな事言わずともわかる。」
そう、言われなくともわかっている。
狐は自分に言い聞かせる。
…ハマるなどあるわけがない。
女に、ましてや人間に。
気に入ってはいる
コロコロ変わる表情も
素直な反応も
真っ直ぐな瞳に行動
その癖に酷く臆病な女
側に置きたい位は
気に入っている
だからといってー…
「執着してるぜ、おまえ。」
見ていてわかる、と頭を掻く黒鵺に、金の瞳が一瞬揺らぐもそれを隠す様に瞳を伏せる。
狐の脳裏に彼女の表情が過るー…
笑い、泣き
時に怒るー…
『蔵馬さん、ありがとうございます』
そして、頬を赤らめ照れたそれに胸の奥がくすぐったかった…
あぁー…
厄介だー…
「どれだけの付き合いだと思ってる、おまえさっきどんな情けない面して団員の前に出てたかわかってねぇだろ。」
「……。」
「女一人に狼狽えるんじゃねぇよ、蔵馬。おまえはー…」
「黒鵺…。」
金の瞳がゆらりと開けば黒鵺を鋭く見据える。
「俺が女に溺れて腑抜けになるとでも言いたいのか?賊すらまとめられんと。」
「…ないとはいいきれねぇ。」
「ないな。俺の生き方はおまえが一番良く知っているだろう?」
そうだ。
これが人間でも己の何を変える必要があるのか。
「…これは死なせるわけにはいかん。」
低い狐の声色に黒鵺は思わず目を見開く。
気に入っている
だから、死なせたくないだけ
「おまえがこれの命を測るな。」
ゆるりと彼女の頬を撫でれば、柔らかな感触に狐の体の奥が熱をもつ。
「……。」
「これを生かすも殺すも、俺だ。」
執着している事などとっくに気づいている。
そう、人だからなんだというのだ。
「蔵馬…おまえー…」
探る様な黒鵺の瞳を真っ直ぐに見る。
「俺は盗賊だ。」
どこか妖艶な笑みを向ける狐に黒鵺は唾をごくりと飲み込むのだった。
そうだ…
何を迷うことがある。
俺は盗賊だ。
『私!奇生水もらえる様頑張ります!!』
意気込み笑う女の顔が脳裏に浮かぶも、それは酷く霞んでいくー…
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