薔薇とお狐様2
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ゆるりと蔵馬の寝室の扉が開く
ベットの上で座りながら本を読む狐は自室にあたかも自然に入ってきた女に微かに目を見開く。
「蔵馬さん。また本を読んでたんですね?」
そっと扉に手を添えゆっくりと閉める。
「ああ。どうした?…そういえば、もう夕食だったな。」
「はい、呼びに来ました。」
くすりと微笑み狐の側に寄る栄子。
「……。」
あれから何気に避けられていた狐。
少なからずこんな無防備に自分の側に寄るなどしばらくはないだろうと思っていた彼は内心驚いていた。
ベットに腰掛ける栄子は、狐の持つ本を覗き込む様に身を傾けた。
「…これは…、また難しい本を読んでいるんですね。」
「……栄子。」
パタンと本を閉じベットに置く狐。
「はい。なんですか?」
至近距離で蔵馬を見上げる栄子。
それに顎を掬う狐。
栄子の顔を覗き込む様に顔を近付ける。
「…また舐めてほしいのか?こんなに側にきて。」
意地悪く細まる金の瞳。
それをじっと見据える女の瞳。
それは妖艶に細まり真っ直ぐに狐の瞳を見つめる。
「なぜ来てはいけないのですか?」
艶やかな色を含む女の瞳と声。
それに狐は息を飲む。
「私があなたのそばに居たいから来たんです、どうしてそれがいけないの?」
狐の背に栄子の腕が周ればそのまま胸元へ顔を寄せる彼女。
目を見開く。
まさか抱きつかれるなどと思わなかった狐は、一瞬放心する。
そして彼女の柔らかな身体と髪から香る香りを感じれば体の芯がじわりと熱を持つ。
「……。」
「…蔵馬さん。」
頬を胸元に寄せながら顔を微かに上げる栄子。
色香を乗せたその妖艶な瞳。
しかし狐は息をつく。
まるで熱を押し殺す様に瞳を伏せる。
「…何かあったのか?栄子。」
そう言えば怪訝そうに眉を寄せる栄子。
「いつものお前らしくない。何があった?」
「……。」
蔵馬の瞳を見つめたまま揺れる栄子の瞳。
「どうした?」
頭を撫でようとそこに手を伸ばせば、栄子の瞳が大きく見開きその手を避ける。
そして震える声で呟く。
「なん、で…?」
わなわなと彼女の体も震える。
「……。」
「本当に…蔵馬、さん?」
「……。」
「……あ、すみません。私何言ってるんでしょう。そうですよね、そうです。」
栄子は俯くも、不意に狐を力一杯押す。
それに逆らわず容易に倒れる蔵馬。
狐の見上げるそこには酷くゆがんだ彼女の表情があった。
「……。」
「これなら、どう、ですか?」
はらりと上着をずらし肌を露わにする栄子。
それに狐は今の己には目の毒だと思いながらも、やれやれと息をつき目を瞑る。
「…欲しいが、中身はいらん。」
「!?」
「離れろ。不愉快だ。」
冷めた金の瞳が栄子を射抜く。
正確には栄子の中にいる別のモノにそれは向けられていた。
「…やはり、わかるのですか。」
哀しげに瞳を揺らす栄子。
しかしその瞳の奥に潜むメラメラと燃える憎しみも濃く浮き出る。
「これの中から出ていけ。そうしたら俺はこれに飽きるまで触れさせてもらう。」
まぁこれが怒らない程度だが。と笑みを浮かべ、さらりと栄子の髪をすくえば優しく口付ける。
「……。」
「早く出ていけ。」
金の瞳がギロリと栄子の瞳を射抜く。
それに栄子は泣きそうに顔を歪め微笑んだ。
「……では、蔵馬様…あなたが死んでくださいませ。」
冷酷な言葉と共に
狐に振り下ろされるナイフ
それに蔵馬は大きく目を見開くー…
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