薔薇とお狐様2

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それは雪がしんしんと降る夜。


屋敷内にある見張り小屋は数人が入れる位の小さい小屋だ。
寒いこの時期は小さい小屋故にストーブを付ければ早々と温まる室内の為、見張り当番もそうそう苦ではなかった。


その日の当番は黒鵺だった。
酒を仰ぎ煙草を吸いながら交代を待つ黒鵺。


そんな彼の側では…



「ねぇ、黒鵺さん…僕、ずっと思ってた事があるんですけど…。」


ごろごろと長椅子に寝そべりながら呟く琥珀の姿があった。


黒鵺の当番だと知ってて遊びに来た琥珀。
子供はもう寝る時間だ、と悪態を付かれるも何を今更と笑う妖怪の少年。



「蛇族の事なんですけど…もう全滅したんでしょうか?」



「…どうした、いきなり。」



「いえ、この前襲撃された後からちょっと疑問でして…。あれで全部だったのかな…て。蛇族は執念深いから生き残りが攻めてきたのは分かるんです。恨み妬みを根源に動く一族ですからきっと仲間を殺した僕達を許せない。でも、あれが全部だとは思えなくて…。」


「…そうだな。」



「……それに-…」

琥珀は身を起こし真っ直ぐに黒鵺を見る。



「…どうして、結界のあるこの屋敷があぁも簡単に見つかったんでしょうか?」


「……。」



「…そんなの-…」

「蔵馬は分かってる。」


俯き加減で言いかける琥珀に黒鵺は低く呟けば、少年は「え?」と、顔を上げる。



「あいつは鼻っから分かってた。襲撃される前からな…。」



「そ、それって…」



「あいつは誰とも言わず、皆のいる前でそいつに警告したんだがな…。」




(-…そう、俺を使って…。)


『蛇族と繋がっていたのか?』
『今ここで死ぬか-…』


あれはたまたまいた侵入者である栄子を使って出た狐の別の思惑



「あぁ、やっぱりあれってそうだったんですね。」


琥珀はやっぱりそうだったんだ…とほっと息を付く。


「頭が黒鵺さんにあんな事言うからびっくりしてたんですよ。でも、なら納得です。頭自身が誰よりも信用している黒鵺さんが裏切っても容赦なく死を宣告する。それほどの事だ、と。…それを他の団員に見せ付けることで忠告してたんですね、裏切りは死だと。」



「…あぁ。蔵馬は…あいつは信じたんだ。だが、襲撃は起こった、団員も数名死んだ…。」



「……。」



「極悪非道妖狐•蔵馬と言われようと、仲間思いの良い奴だ。一度身内に入れた者はそう疑いたくないのが本音、だがそれでは頭は務まらない。」


雲海の罰だってそうだ。
結局はあいつが雲海と栄子を迎えにいった。



「頭…ショック、だったんでしょうね。」



「どうだかな。裏切りは裏切りだ…見切りをつければアイツは許しを請おうが容赦ない。」


そう、そうなれば蔵馬は容赦などしない。
残忍で冷酷な修羅と化す。


「頭…どうするんでしょうか?」


「まぁ、見とけ。そろそろ最後のあぶり出しだ。」


「…?…あぶり出し??」


「根こそぎ排除だ。狐は追い詰めるのが好きなんだぜ?」

絶対敵にしたくない奴だな…と、と笑う黒鵺に琥珀はごくりと唾を飲み込む。


「まぁ、最近のあいつは若干色ボケしてるから…心配だが。」


ぽそりと呟く黒鵺に琥珀ははっとする。



「そういえば、お頭と栄子さんって…どういう関係なんでしょうか?」


もう一つ琥珀が気になっていた事。
切実な会話の後でこの話題。

黒鵺の顔が微かに歪む。


「…あれって、ペットなんでしょうか?」



「……どう思う?」



「………僕、子供だから分かんないです、黒鵺さん。だから教えてください。」



「うそつけ。」

胡散臭そうな言い方に息をつけば、「嘘です」と笑う少年。


「あれって愛しい感じですよね、きっと。」


「……。」

幼いその少年の目から見ても分かるその感情。
黒鵺は瞳を伏せる。



「しかもあんなお頭初めてで…黒鵺さんが酒を噴出した気持ちよく分かります。僕も間近であれはきついです。」


それに黒鵺ははぁ…と息をつけば気だるそうに窓の外を見る。

しんしんと降る粉雪。
そこから見える屋敷の蔵馬の部屋の窓から漏れる明かり。
出来る黒い二つの影…。

栄子が蔵馬の部屋にいる。

時に栄子は暇つぶしに蔵馬に書物を借りに行くのを黒鵺は知っていた。
そして本来ならば借りて部屋に戻るはずの彼女を蔵馬は呼び止めるのだ…
そしてそのまま栄子が寝ればあの男は律儀に彼女の部屋へあれを運ぶのだ。

それを知ったのはそう昔ではない。
自分の部屋に栄子を迎えに来た時も驚いたが、蔵馬の部屋から栄子を担いで出てきた奴を見たときはもう倒れるかと思ったくらいだ。


人間だという理由で軟弱なのは認める。
だからといって扱いが甘すぎる。





なによりもだ-…



「…悪い事じゃねぇ…女の一人二人いたってかまわねぇんだ。だが-…蔵馬のあれへの扱いは今までの女と違うから、困る。」


「……やってないんですか?」


「あぁ、やってねぇな。しかも、ほかの女も最近は呼んでねぇみたいだ。」


他の女と扱いが同じならそうそう気にはしない。


興味があるから構う
なのに手を出さない

まるで優しく慈しむように甘く栄子を見る


「お、お頭病気じゃないですよね?黒鵺さん!!最後のあぶり出しも大丈夫ですか!!?」


あんなに構っていながら手を出してないなんて!!と青くなり慌てる琥珀を横目に黒鵺は笑う。


「まぁ、仕事には支障ない。女にそこまで影響されたら終わりだ。」


そう、終わりだ。
…あんな人間ごときに影響されるなどあってはならない。

あの蔵馬が…
あるはずはない。


「ただ本気で欲しがったら面倒だなと…思ってな。人間だしな。」


そう、それだけ。
ただ、面倒なだけだ…



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