薔薇とお狐様2
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「かぁ~!!うめぇ!!!仕事の後の酒は本当にうめぇ!!!」
「祝い酒だ!!今年最後の大仕事がこうも大収穫とは来年も先行き明るいぜ!!」
それは、えんやわんやの大宴会。
大広間である宴会場では大の男たちがこれでもかと酒を仰ぎ今回の仕事の勝利を祝っていた。
数日前に出かけ、今年最後だという大仕事が無事成功し蔵馬率いる盗賊団が帰ってきた時のは数時間前の事。
栄子はこれでもかと酒瓶を乗せた盆を両手で抱え足取り悪く廊下を歩いていた。
「栄子さん、大丈夫ですか?僕、持ちましょうか??前…見えますか?」
彼女の隣を歩く琥珀は、ご馳走の乗った大皿を頭の上、片手ずつに二、三枚器用に持ったまま心配気に栄子を見る。
「大丈夫、大丈夫よ。琥珀君。それにしても、君すごいのね。妖怪って本当に底が見えないわ。」
「僕、小さい頃からモノ運びばっかさせられてたんで、一気に運べたらどんなに楽か毎日考えてたら、いつの間にか出来るようになったんです。」
「へぇ…なんでも環境なんだね。って、蔵馬さんにこき使われていたって事??」
(こんな幼い子に…蔵馬さん…)
「え、いや、違います。頭に拾われる前です。僕の生まれた地域は貧しい場所で、小さい頃から宿屋で下働きとしてずっと働いていたんです、その時に。」
「…あ、そうなんだ。」
「頭に拾ってもらって、僕は人生がこんなに楽しいものだと知りました。色んな人と出会えるし、何より沢山書物を読ませてもらえるし、夢みたいです。」
へへっと隣で頬を染め笑う琥珀。
「……。」
「それに栄子さん知ってます?頭って本当に凄いんです。人を育てるのがすごく上手で、僕が今鑑定士としていれるのも頭がいてくれたからこそで。モノの真価を定められる目利きの才能があるって言ってくれたの頭なんです。」
あ、もちろんそのおかげで修行だとかで怖い思いも死にそうな思いも沢山させてもらいましたけどね…と琥珀は笑う。
「頭は人を見る目が凄いんです。なんでも見抜いてしまう…。」
「うん…。」
そうなのだ-…
だからこそ、彼は上に立てる。
そして、酷く悲しくもあるのだ。
誰よりも先を見据え誰よりも頭の回転が早い彼だから
きっと相手の出方も見えてしまう
そしてすでに対処を考えて行動してしまうんだろう-…
特に蔵馬の彼はそうに違いない。
それでも-…
「はぁ、やっとついた。」
琥珀はよっと!!と肘で戸を開ける。
その瞬間湧き上がる歓声。
「おぉ、やっときたかぁ!!待ちくたびれたぜ、琥珀!!それに嬢ちゃん!!!」
ただでさえ騒がしかったそれに追加の酒と料理が目に入れば、待ってました!!とばかりに団員達のテンションは上がる上がる。
「はいはい、皆さん。怪我がなくてなによりです、一杯食べて一杯寝てくださいね。」
琥珀は苦笑しながらも、適当に大皿を置いて行くので、栄子も琥珀の後ろに付きながら適当に酒瓶を置いて行く。
「おっと嬢ちゃんはこっちおいでって!!」
最後の一瓶を置こうとすれば隣から出てきた酔っ払いの団員の手に腕を引かれる。
一瞬ふら付き小さな悲鳴を上げる栄子だったが…その場で留まる。
栄子の視線の先には、自分の腕を持つ妖怪の手首を持つ小さな手。
その小さな手を辿れば案の定すぐ側にいた琥珀が視界に入る。
満面の笑みでにっこりと笑う琥珀。
その笑みは自分ではなく自分の腕を掴んだ団員に向けられていた。
「栄子さんは頭の酌をするんです。あなたの相手じゃない。」
ぞくり-…
その瞬間、背筋が寒くなったのはきっと栄子だけではない。
その笑みを向けられた団員は一気に青ざめ口元を引きつらせている。
それに団員が腕を離せば、「ありがとうございます。」と彼に笑みを向け栄子の手を引く琥珀。
「だめですよ、栄子さん。栄子さんは頭といるのが一番安全なんですからね。」
上座に向かう途中に琥珀は「あなたは人間なんですから。」と念を押される。
「琥珀くん、あんな殺気飛ばせるんだ。」
(かわいい顔して本当に恐ろしかった…いや、見た目に惑わされるな、私。)
「あれは経験の賜物です。力はないですけどね、僕ハッタリと殺気飛ばすのは得意なんです。」
とくすくすと笑う琥珀に、そうは見えない…と思う栄子。
団員の腕は確かミシミシといっていたような気がする。
「頭が帰ってきたといっても、頭の目の前で僕が失態するわけにもいかないでしょう。」
「失態?」
(なんの話だ?)
「あ、えっと…。あなたはおいしそうな人間だから気をつけてくださいって事ですよ。」
再び天使のような満面の笑みを向けられれば違和感も吹き飛ぶ栄子。
そのまま手を引かれ蔵馬の元へ連れて行かれるのだった。
そして、その背後では-…
先程琥珀に腕を握られた男がじっとりと栄子を舐める様に見ていたとは言うまでも無かった。
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