薔薇とお狐様2
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最近蔵馬の様子が変だ-…
そう、黒鵺は思っていた。
まず夜の付き合いが悪くなった
繁華街に出歩くのも面倒だと言う様になり、女が尋ねてくれば気が向けば相手をするものの、以前のような頻繁なものではない。
-…病気にでもなったか?
そして仕事もそうだ。
以前ならば寄り道をして帰る事も多々だった蔵馬が、最近では…
早く帰りたそうだ-…
今更ホークシックか??
そして俺はある事に気づく-…
「栄子はどこだ?」
「栄子はどこにいる?」
最近、異様に栄子栄子とうるさい気がしてならない。
まさか-…
いやいや、蔵馬に限ってそれは絶対ない。
それにそもそも蔵馬のタイプの女では到底ない。
並中の並だ。
確かに愛嬌もあればそれなりかもしれないが、所詮それなりだ。
特別ってわけでもない。
気になり、一度恐る恐る「惚れたのか?」と聞いたが「何を馬鹿な事を。」と鼻で笑われたのを覚えている。
「黒鵺さんお休み中すみません。雲海さん知りませんか?」
深夜…寝ている俺の部屋をノックし、恐る恐る扉を開ける女。
まずノックして返事がない時点で帰ればいいものをなぜ開ける。
俺が夜更かしをするというのと居留守を良く使うという事がばれているらしく、最近のこいつは容赦がない。
「おまえ何時だと思ってる。」
「すみません。雲海さんが一時間ほど前に外に出たっきり戻ってこなくて…。」
「…おまえらこんな夜中に何してるんだ?」
夜中に男と二人でこの女は危機管理が薄すぎる。
「薬草の研究です。あと治癒力の新規開発を手伝ってもらってます。最近昼間は忙しいから。」
「それにしても遅すぎるだろ。」
「雲海さんが良いって言うんで。」
「そういう問題じゃねぇ。」
馬鹿じゃなかろうか。
年頃の女がもう少し考えろ。
「……どこに、行ったんでしょうか?」
「知るか。とりあえずおまえ部屋に帰れ。雲海が帰ってきたら教えてやる。」
俺と雲海は隣同士の部屋だ。
だからすぐに分かる。
「……ここで、待ってたら嫌ですか?」
「あたりまえだ。」
寝かせろ。
「そうですか…廊下は寒いから嫌だったんですが…仕方ないですね。」
しゅんっと頭を垂れ戻ろうとする女、同時に廊下を通る部下達の声。
それに「あっ!!」と瞳を輝かせるコレに「待て待て…」と声を掛ける。
「何が、あ!!だ。おまえまさか男の部屋で待つつもりか?」
「え、ジョン君はまだ少年ですよ?問題ないでしょう??」
「あいつはあれでももう50歳だ。見た目に惑わされるな、そういう妖怪なんだ。」
「え、えぇっ!!」
そうなんだ…となぜか青くなる栄子に黒鵺ははぁ…と息をつく。
「雲海が戻るまでだ。今回だけだぞ。後、次からこんな夜中に会うな、分かったか。」
「…い、いいんですか?やったぁ!!!」
わぁいっ!!と両手を挙げ喜ぶ彼女に、黒鵺はどっと肩を落とす。
そして-…
ベットの上を占領し、仰向けになりながらも涎を垂らし寝る女。
「……。」
そんな女を見下ろしながら立ち竦む俺。
栄子を置いて風呂に行って帰ってきたら案の定だ。
額に立つ青筋。
雲海にあたってやる-…
そんな時、廊下を歩く足音にやっと帰って来たかと扉を開け「遅い!!!」と顔を出す俺だったが…
「………黒鵺…」
扉を開けた先にあるのは、今から入ろうとしていたのか正面から見下ろす蔵馬の顔。
「蔵馬…ど、どうしたんだ?」
それに蔵馬は視線を部屋の中へ向ける。
「あれはここにいるんだろう?」
「あ、あれ?あぁ、あの人間の女か?あいつ…」
言いかければ蔵馬はずんずんと部屋に入る。
そして、ベットで仰向けになる栄子の腰に手を回し肩に担ぐ。
「雲海が帰ってきたら言っておけ。」
「…へ??」
「明日は仕置きだとな。」
振り返り冷たい笑みを浮かべる蔵馬は酷く妖艶で、黒鵺はごくりと唾を飲み込む。
「蔵馬…おまえ…」
「なんだ?」
そしてそのまま蔵馬の視線が背にある女の顔に落ちれば微かに緩む蔵馬の顔。
「…いや、なんでもない。」
その女を見る蔵馬の瞳が今まで見たことない程優しくて…
俺は-…
去って行く蔵馬に頭を掻きながら呟いた。
「それは人間の女だぜ…蔵馬。」
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