薔薇とお狐様2
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季節が移り変わり、冬が来る-…
そんなある日。
「この妖狼族の牙で作られた首飾りはかなりの額が付きます。要らないのなら売って損はないかと…交渉は僕が立ち会います。」
一人の幼く白髪の妖怪の少年は椅子に腰掛け、たった今手渡させた首飾りを確認すれば側にある箱に入れ、机の上の紙に記帳して行く。
そして「琥珀、次はこれだ。」と彼に新たに物を渡して行くのは右腕の黒鵺だ。
地下にある宝庫の場所は頭と右腕…そして数人の部下しか知らない。
そして、今その場所に居るのは蔵馬、黒鵺、そして琥珀という妖怪だった。
琥珀はまだ幼い。
戦争で親を亡くし一人途方に暮れていた所を盗賊団の頭である蔵馬に拾われ今に至る。
まだ十数年しか生きていない琥珀だが、それでも幼い頃から培ってきた知識を買われ幼いながらも鑑定士としてその腕を振るっていた。
もちろん頭である蔵馬に信用がなければ宝庫になど入れるわけもないが。
鑑定して行く琥珀に、蔵馬が興味をなくした代物を一つ一つ渡して行く黒鵺。
一度宝を愛でれば大抵のモノは狐にとって必要なくなる。
日に日に増えて行く宝をこうして時期が来れば闇市に売りに出すのが日常だ。
そんな中、宝庫内を好き勝手歩く蔵馬…。
「蔵馬…おまえも手伝えよ。まだまだあるぜ?」
黒鵺が蔵馬から右腕の任を与えられてから一ヶ月。
しかし、なんら以前と対応も扱いも変わることはない。
こんな仕分けの仕事までなんで俺が…と、げっそりしながら思う黒鵺だが蔵馬の信頼あっての仕事だと分かっているからこそ何も言えない。
そして琥珀はといえば側で上機嫌で鑑定している。
琥珀にとっては腕力のない自分の唯一の力の見せ所なのだ。
「琥珀…」
ふいに蔵馬が彼を呼ぶ。
「なんですか、頭。」
「これは何だ?」
蔵馬から投げられればそれを受け取る琥珀。
透明な小瓶に入った青い液体。
蛇族から強奪した内の一つだ。
「……文献でも見たことはないですね。ただ、蛇族は長寿の種でしたよね。だったらこれもそれに関わるものの一つかと。」
蓋を開けくんくんと嗅げば、一滴を指に落としそれをぺろりと舐める。
「……味はしないし、なんでしょうこれは。預かってもいいでしょうか?頭。」
「かまわん。」
「蔵馬…これももういらねぇだろ??」
他を物色していた黒鵺が、蔵馬に向かって物を投げれば受け取り見る狐。
「………。」
「そんな胡散臭いもん必要か?」
必要ねぇよな?と他をまた物色する黒鵺。
蔵馬は"それ"を手に持ったまま苦笑する。
「それも見ましょうか?頭。」
「いや、必要ない。」
琥珀の言葉に首を振り、それをそっと胸の内に入れる狐。
「おーい、蔵馬…これももういらねぇだろ??」
次から次へと物を投げる黒鵺に、丁寧に扱えと一括する蔵馬だった。
『奇跡の泉の水が必要なんです。』
約束は守るものだ-…
当初の思惑と違うものの、そろそろ開放してもいいかもしれんと-…
俺らしくもなく思ってしまった
微かに胸の内を燻るのは
感じた事も無い苦い感情-…
そして相反する甘く温かな気持ち
日に日に急速に育つそれに狐は静かに瞳を伏せる
これ以上厄介な事になる前に-…
それは季節が冬に近づく
ある日の蔵馬の心情のお話-…
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