薔薇とお狐様2
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『…愚かな…銀狐よ…』
そう力なく呟くのは、見目美しく麗しい女だった。
女はその身と長い黒髪を床に沈めながら苦痛に歪む顔を上げ真っ直ぐに目の前の男を睨みつけた。
しかし、その男の金の瞳は一切感情を映し出すこともなく、ただ床にひれ伏す女の最期の言葉だろうと思えるそれに耳を傾けているだけだった。
『冷たく、凍るような目…、お前は誰も愛したことなどないのであろう。その凍りきった目では己を想う気持ちにさえ気づけぬ、愚かな狐…』
血の池に沈んで行く女。
蛇族の巫女だと名乗ったその女は見つけた時にはすでに自分で胸に深々とナイフを刺していた。
自害をしようとしていたことなど見て取れる。
止めるわけもない。
己が選んで生死を決めた、女というだけで辱められるとでも思ったのだろうか。
しかし、その誇りは敬意に値する。
だからこそ狐はその女の言葉を最後まで聞くつもりでいたのだ。
『だが、いつか出逢う…であろう、その女は…お前にとっての脅威となろう…愛しいが故におまえは…身を滅ぼす。』
それに狐は瞳を細める。
『愛を知らぬおまえがまともに愛することなど出来ぬ…愛しい女を血で濡らし…おまえ達は決して結ばれず、おまえは…死を、迎えるであろう…』
「………。」
『可哀想な愚かな…妖狐、よ…。』
そう女が呟けば、がくりと頭が落ちる。
-…命が事切れた証。
それをしばらく見下ろす蔵馬。
その表情に感情は無い。
「戯言が…。そんなもの必要ない。」
低く誰に言うでもなく呟く。
遠くから響く黒鵺の自分を呼ぶ声。
蔵馬は巫女の部屋にあるめぼしい物だけを拝借してその部屋から出るのだった-…
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